イスラエルとヨルダンは、長い歴史を有する隣国であり、その関係は戦争から平和協定、そして現在の協力関係へと大きく変化してきました。この記事では、両国の関係の歴史的背景から、現在の協力の実態までを詳しく解説します。
1948年から1994年までの対立の歴史
イスラエルとヨルダンの関係は、1948年の第一次中東戦争にさかのぼります。ヨルダンはアラブ連盟の一員としてイスラエルに対して戦争を仕掛けましたが、戦争の結果としてヨルダンは西岸地区と東エルサレムを占領しました。これらの地域は後にイスラエルに占領されることとなり、両国間の対立は続きました。
その後、1967年の六日戦争では、ヨルダンはエジプトと共にイスラエルと戦いましたが、敗北し西岸地区と東エルサレムを失いました。これにより、両国間の緊張はさらに高まりました。
1994年の平和協定締結
長年の対立を経て、1994年10月26日、イスラエルとヨルダンは「ワディ・アラバ平和条約」を締結しました。この協定により、両国は正式に戦争状態を終結させ、国交を樹立しました。協定の主な内容には、領土問題の解決、水資源の共有、観光や貿易の促進、安全保障協力などが含まれています。
特に、水資源の共有に関しては、ヨルダンは毎年5000万立方メートルの水をイスラエルから供給されることとなり、両国は共同で水資源の管理を行うこととなりました。
経済・安全保障面での協力
平和協定締結後、両国は経済面でも協力を深めました。例えば、ヨルダンはイスラエルと共に「クオリファイド・インダストリアル・ゾーン」を設立し、これによりヨルダンはアメリカへの輸出に関して関税の優遇措置を受けることができました。
また、安全保障面でも協力が進み、両国はテロリズムや密輸の防止、国境の監視などで連携を強化しています。特に、イランの無人機がイスラエルに向かう途中、ヨルダン軍がこれを迎撃した事例もあり、両国の安全保障協力の重要性が増しています。
現在の関係と課題
現在、イスラエルとヨルダンの関係は「冷たい平和」とも表現されることがあります。これは、公式には平和協定が結ばれているものの、両国民間の感情や政治的な課題が依然として存在するためです。
特に、パレスチナ問題やエルサレムの聖地に対する立場の違いが、両国間の関係に影響を与えています。例えば、2023年のガザ戦争では、ヨルダン政府はイスラエルの行動を批判し、国民の間でも反イスラエル感情が高まりました。
まとめ
イスラエルとヨルダンの関係は、戦争から平和協定、そして現在の協力関係へと大きく変化してきました。両国は経済や安全保障の面での協力を深めていますが、依然として政治的な課題や民間の感情が関係に影響を与えています。今後、両国がこれらの課題をどのように乗り越えていくかが、地域の安定にとって重要な鍵となるでしょう。
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