第三者を守る行為は正当防衛になるのか?日本の法律で読み解く正当防衛と緊急避難の違い

事件、事故

街中や日常生活で誰かが危険な目に遭っている場面に出くわしたとき、助けに入ることは人道的に賞賛される行為ですが、法的にはどう評価されるのでしょうか?今回は「第三者を助けるために相手を倒した場合、それは正当防衛と認められるのか?」という疑問について、日本の刑法をもとに解説します。

正当防衛とは何か?刑法第36条の基本理解

日本の刑法第36条は「急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」と規定しています。この中で注目すべきは「他人の権利を防衛するため」の部分です。つまり、自分自身だけでなく、第三者を守る行動も一定の条件を満たせば正当防衛として認められます。

例えば、通行人が突然暴漢に襲われている場面で、加害者を取り押さえる、または制圧行為に出た場合、それが過剰でなく必要な範囲内であれば「正当防衛」とされる可能性があります。

正当防衛が成立するための3つの要件

  • 急迫性:攻撃が今まさに行われている、または直前であること。
  • 不正性:相手の行為が違法であること。
  • 防衛の意思と相当性:自己や他人の権利を守るための行為で、過剰ではないこと。

これらがすべて揃って初めて、法的に「正当防衛」として認められます。過剰に暴力を振るったり、攻撃が終わってから反撃した場合などは認定されにくくなります。

「正当防衛」ではなく「緊急避難」と判断されるケース

場合によっては「正当防衛」ではなく、「緊急避難」(刑法第37条)とされることもあります。緊急避難とは、自分や他人の生命・身体・財産などに対する危険を避けるため、やむを得ず他人に損害を与える行為のことです。

たとえば、火事の現場から人を救い出すために他人の家の窓を破って入る行為などがこれにあたります。第三者を助ける行為でも、状況によっては「正当防衛」よりも「緊急避難」の方が適用されやすい場合があります。

実例:コンビニ強盗を取り押さえた市民のケース

あるケースでは、コンビニ強盗を制圧した市民が、その際に相手にケガをさせたものの、「正当防衛が成立した」として不起訴処分となった事例があります。このように「助ける意思があり、相手の攻撃を防ぐために必要な範囲で行動した」と判断されれば、正当防衛として受け入れられる可能性は十分にあるのです。

ただし、行き過ぎた行動は逆に「傷害罪」などに問われることもあるため注意が必要です。

まとめ:他人を助ける行為も法の保護対象になる

日本の刑法では、第三者を守るための行動も「正当防衛」として認められる可能性がありますが、必要なのは「急迫性」「不正性」「相当性」の3要件が満たされていることです。勇気をもって誰かを助ける行為が適切に評価されるためにも、法律の基本を知っておくことはとても大切です。

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