トランプ大統領が日本製鉄によるUSスチール買収を承認した背景とその影響

2025年6月18日、日本製鉄は約149億ドル（約2兆円）で米国の鉄鋼大手USスチールを買収し、世界第2位の鉄鋼メーカーが誕生しました。トランプ大統領はこの取引を承認しましたが、その背景には米国の国家安全保障や雇用、産業政策への深い関与がありました。

買収の経緯とトランプ大統領の関与

日本製鉄は2023年12月にUSスチールの買収を発表しましたが、2024年1月に当時のバイデン大統領が国家安全保障上の懸念から取引を禁止しました。これに対し、日本製鉄とUSスチールは訴訟を起こし、2025年4月にトランプ大統領が再審査を指示しました。

その結果、トランプ大統領は2025年6月13日に大統領令を発し、国家安全保障協定（NSA）を締結することで取引を承認しました。NSAには、米国政府に「黄金株」を付与し、重要な経営判断に対する拒否権を与えることが含まれています。

日本製鉄は、USスチールの本社をピッツバーグに維持し、主要な経営陣を米国市民で構成することを約束しました。また、2028年までに110億ドルの投資を行い、米国の鉄鋼業の近代化と雇用創出に貢献する意向を示しました。

さらに、USスチールの労働組合であるUnited Steelworkers（USW）との契約を尊重し、労働者の権利を保護する方針を明確にしました。

トランプ大統領は、米国の製造業と雇用を保護する政策を強調しており、この取引もその一環と位置付けられます。特に、ペンシルベニア州などの重要な州での雇用維持と産業基盤の強化が狙いです。

一方で、民主党や労働組合からは、外国企業による米国企業の支配が進むことへの懸念も表明されています。今後、他の外国企業による米国企業への投資に対する規制の強化が議論される可能性があります。

トランプ大統領の承認により、日本製鉄とUSスチールの統合は実現しました。これは、米国の国家安全保障、雇用、産業政策を考慮した上での戦略的な決定といえます。今後、この取引が米国の製造業や国際的な投資環境に与える影響について、引き続き注視する必要があります。