サハラ砂漠の広大な面積と豊富な日射量を活用し、ヨーロッパへの電力供給を目指す構想が注目されています。特に、モロッコから英国への海底高圧直流(HVDC)ケーブルによる送電計画が進行中です。この記事では、この構想の現実性と課題について詳しく解説します。
モロッコから英国への送電計画
英国の電力会社XLCCは、モロッコ中央部のゲルミン=オウィド・ノウン地方で太陽光と風力を利用して10.5ギガワットの電力を生産し、これを海底3,800kmに及ぶHVDCケーブルで英国へ送電する計画を進めています。この電力は、英国の700万世帯分に相当します。
HVDC技術の利点と課題
HVDC技術は、長距離送電においてエネルギー損失が約2%と低く、再生可能エネルギーの安定供給に適しています。しかし、送電ケーブルの敷設には莫大なコストと時間がかかり、特に海底ケーブルの接合部は最も弱い部分であり、予期せぬ損傷が発生すれば、修復には時間と費用がかかる可能性があります。
地政学的リスクと安全保障の懸念
サハラ砂漠地域は政治的に不安定な国々が多く、テロ攻撃のリスクが存在します。過去のデータによると、電力関連施設は過激派組織の格好の標的となっており、施設への年間攻撃数が350回を超えた年もあります。これらのリスクに対処するため、各国が相互接続の多様なネットワークを構築すれば、テロへの懸念は最小限に抑えられるとされています。
まとめ
サハラ砂漠からヨーロッパへの太陽光発電による電力供給構想は、技術的には可能であり、再生可能エネルギーの安定供給に寄与する可能性があります。しかし、膨大なコスト、長期間の敷設作業、地政学的リスクなどの課題が存在します。これらの課題を克服するためには、国際的な協力と技術革新が不可欠です。
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