台風や低気圧が接近すると「暴風警報」が発令されることがありますが、風速の数字だけを見ると、地域によって警報の有無が違うことに疑問を持つ方も多いでしょう。例えば、風速10mで暴風警報が出る地域もあれば、14〜18mでも発令されない場合もあります。この記事では、その理由をわかりやすく解説します。
1. 暴風警報は風速だけで決まるものではない
気象庁が発表する暴風警報は、単に「風速が何メートルになったら出る」という単純な基準ではありません。警報の発令基準は、地域ごとに設定された基準風速と被害想定に基づいており、風の強さ・継続時間・地形・人口密度などが考慮されます。そのため、同じ風速でも地域によって警報の有無が異なるのです。
2. 地域によって違う「基準風速」
例えば、台風常襲地域である沖縄や九州南部では、建物が強風に耐えやすい構造になっているため、暴風警報の基準風速は高めに設定されています。一方、台風が少ない地域では、比較的弱い風でも被害が出やすいため、基準が低く設定されています。つまり、その地域がどの程度の風に慣れているかが警報発令の基準に影響しているのです。
3. 平均風速と最大瞬間風速の違い
風速の数値を比較する際には、「平均風速」と「最大瞬間風速」の違いにも注意が必要です。平均風速は10分間の平均値を示すのに対し、最大瞬間風速はその間で最も強かった一瞬の風を表します。暴風警報の発令には平均風速が用いられるため、瞬間的に強い風が吹いても、平均値が基準を下回れば警報が出ないことがあります。
4. 地形や建物の影響も大きい
風の強さは、地形や建物の密度によっても大きく変わります。山間部や都市部では風が遮られることが多いのに対し、海岸部や平地では風が通りやすくなります。そのため、同じ風速でも場所によって体感が違い、観測地点の条件が警報発令の判断に影響することがあります。
5. 実際の発令例と地域差
例えば、東京や大阪では平均風速20m前後で暴風警報が出ることが多いのに対し、沖縄では25m以上でも出ない場合があります。これは地域の建築基準や風害のリスク評価が異なるためです。気象庁は、こうした地域差を踏まえて「被害が想定されるかどうか」で判断しているのです。
まとめ: 風速の数字だけで判断しない
暴風警報は単に風速だけで決まるものではなく、地域特性、被害想定、平均風速、地形条件など複数の要素で判断されています。風速が高くても警報が出ない場合、それは安全という意味ではなく、「その地域ではまだ基準に達していない」ということです。強風が続く際は、警報の有無に関わらず安全を最優先に行動しましょう。
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