山梨県在住の方が「東京都へ通勤している人は意外に多く、栃木県からの通勤者よりもはるかに多い」という話を耳にすることがあります。今回はこの仮説を、最新の統計データに基づいて整理し、実態と注意すべきポイントを見ていきます。
山梨県から東京都へ通勤・通学している人数の実態
令和2年国勢調査によると、山梨県に常住する就業者・通学者481 , 358人のうち、他県へ就業・通学している者は16 , 526人で、そのうち東京都へ向かう数は9 , 394人となっています。([参照](https://www.pref.yamanashi.jp/toukei_2/HP/DATA/2koku_jyuugyouti%20tuugakuti.pdf))
この数値から見ると、山梨県の「東京都通勤・通学者数」は他県への流出数のうち約56.8%を占めており、実数としては1万人弱です。
栃木県から東京都へ通勤・通学している人数の実態
同じく令和2年国勢調査の栃木県版では、他県への就業・通学流出人口の内訳として、最も多い移動先は群馬県等であり、東京都への具体的な流出数は公表概要欄では明記されていません。([参照](https://www.pref.tochigi.lg.jp/c04/documents/r2kokutyou_jyuugyoutuugaku_tochigi.pdf))
つまり、山梨県の9,394人という東京都向け流出数と比べて、栃木県から東京都へ通勤・通学している人数がそれ以上であるという確かなデータは現時点では確認できません。
なぜ「多い」という印象が生まれやすいか:要因整理
山梨県が東京都内への流出先首位であるという事実は、通勤・通学の選択肢と距離感、鉄道・高速交通の利便性などが背景にあります。中央線・JR・高速道路などが東京都との接続を支えており「県外通勤」を可能にしてきた面があります。
逆に栃木県から東京都へ毎日通勤するというケースは他県も含めた広域の流出先が多く、「東京都単独」というデータとして明確に比較されることが少ないこともあり、「山梨県から東京通勤者の方が多い」という印象が生まれがちです。
注意すべき点:通勤者数≠全体の通勤流出・構造の違い
まず、「東京都へ通勤・通学している」というデータには「就業だけ」ではなく「通学」を含むことがあるため、働いている人数だけで比較する際には注意が必要です。山梨県の9 , 394人は就業・通学の合算値です。
また、距離・交通時間・料金など実務上の通勤条件も県ごとで大きく異なります。たとえば、山梨県の甲府・大月方面から東京都心部への通勤は時間・コストの面で難易度が高く、実態としては「週末拠点通勤」「移住後テレワーク併用」などの選択肢も多くなっています。
まとめ
データに基づけば、山梨県から東京都への流出通勤・通学者数(9 , 394人)は確認できる一方、栃木県から東京都への同様の人数がそれ以上であるという明確な裏付けは現状ありません。そのため「山梨県から東京へ通勤している者は意外に多く、栃木県からよりも多い」という話は、少なくとも“裏付けが強い正確な比較”というわけではないと言えます。
もし通勤・移住・働き方の観点で県を比較検討するならば、「交通アクセス」「通勤時間」「世帯収入・コスト」など複数の要素を併せて見ることをおすすめします。


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