なぜフィリピン・ベトナムで台風の被害が大きいのか?日本接近時との違いや防災の視点から考える

台風

台風が〈緯度の低い南シナ海やフィリピン付近〉にいるときと、〈日本近海に接近しているとき〉では、勢力・被害の出やすさ・対応力に違いが出ることがあります。今回はこの違いを「発達メカニズム」「地理的・社会的背景」「日本との比較」の観点から整理します。

台風の発達に有利な条件――緯度・海面温度・コリオリ力

台風(熱帯低気圧)は、海水温が約26〜27℃以上の広い海域で発達しやすく、かつある程度のコリオリ力(緯度による回転力)がある場所で生成・急発達します。([参照] PAGASA 台風について)

南シナ海・フィリピン海など、熱帯~亜熱帯に近く、海面温度が高めで時間をかけて発達できる海域では、台風が強いまま陸地に上陸することがあります。例えば、Typhoon Bopha(2012年)はフィリピンにおいて非常に強い勢力で上陸しています。([参照] Wikipedia Bopha)

ただし、「緯度が低い=必ず最大勢力になる/日本に来るまで弱まる」という単純な関係ではありません。海水温や風の垂直せん断、陸地の影響なども重要だからです。

フィリピン・ベトナム地域で被害が大きくなる背景

台風被害が大きくなる背景には、自然条件だけでなく「社会・インフラ・防災体制」の違いも関係します。

【自然条件】
・熱帯に近くて海水温が高く、発達時間が取れやすい。
・上陸前に海上で発達・暴風・大雨・高潮を伴う場合がある。
・島嶼部・山地が多く、豪雨による土砂災害・河川氾濫が起きやすい。

【社会・防災条件】
・住宅の耐風・耐水性能が日本と比較して低いケースもあります。
・避難・警報・情報発信・インフラ整備が十分とは言えない地域も。
・貧困・地域格差により被害回復力(レジリエンス)が弱いことも影響。

これらの条件が重なると、「被害が数百人・数千人規模」で出ることもあり得ます。ただし、これは「緯度が低いから被害が必ず大きい」というわけではなく、複数の要因が組み合わさっています。

日本近くに来るとどう変わるか?勢力・構造・対応の観点から

台風が日本付近に来る時、次のような変化や影響が現れやすいです。

・海面温度の低下・風のせん断(上層の風の強さ)が発達を抑える要因となることがあります。つまり、「最も強かった海上域」から「日本接近時には若干勢力を落として上陸」というケースが多い。
・ただし、強いまま上陸する大型台風も存在し得るため安心できるわけではありません。

・日本では防災・気象観測・警報発令・避難路・避難所などが全国的に整備されており、被害を軽減する体制が比較的整っています。これは被害規模を抑える一因となります。

・また、住居構造・避難文化・社会的収納力なども異なるため、同じ台風が来ても被害状況や死亡者数・復旧期間は異なります。

具体例:緯度が低い地域での大規模被害とその要因

先述のTyphoon Bopha(2012年)は、フィリピン・ミンダナオ島において、中心気圧が非常に低く、暴風・豪雨・高潮を伴い、多数の被害・死者を出しました。([参照] Wikipedia Bopha)

このような例から、「海上で発達して島に直撃」「住宅や避難の備えが十分でない」「地形的に豪雨・土砂災害を誘発しやすい」などの条件が重なった地域では、緯度の低さもあいまって被害が大きくなりやすいと言えます。

防災・対応の観点から覚えておきたいこと

台風の発達条件・被害拡大要因を知ることで、個人・地域で備えるべきポイントが明らかになります。

  • 「強いまま上陸する可能性」があることを前提に、早めの避難・備蓄・住宅の補強を行う。
  • 海上域・島嶼部・山地・河川沿いなど、地盤・地形によるリスクを把握しておく。
  • 警報・情報発信・避難路・地域の対応力の差が被害に直結するため、地域防災体制の整備・訓練を継続する。

まとめ

緯度の低い地域(フィリピン・ベトナム付近)において、台風が非常に強い勢力で発達・上陸することがあるのは、海水温・発達時間・地形・防災体制など多くの条件が重なった結果です。だからといって「緯度だけが原因」という単純な話ではありません。

一方、日本付近に来ても油断は禁物で、勢力を保ったまま上陸する、豪雨や暴風・高潮を伴うケースが増えてきています。地域の備え・情報への即応・日頃の訓練が命を守る鍵となります。

ぜひ、台風という自然現象のメカニズムを知ることで、ご自身・地域・家族の防災力を高めておきましょう。

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