「駿河湾で最近、深さ5〜10kmという浅い地震が多発している」という話を耳にすると、「それはプレート境界に近いのか」「大きな地震の前触れでは?」と不安になるかもしれません。本記事では、駿河湾を取り巻くプレート構造、地震の震源のタイプ、そして“浅い地震が多い”という現状が何を意味するかを、科学的な知見にもとづいて整理します。
駿河湾との構造 ― どんなプレート境界か
駿河湾の沖合には、フィリピン海プレートが日本列島の下に沈み込む場所として、南海トラフの一部である駿河トラフが広がっています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
このような“海溝型/沈み込み帯”では、海底付近から数十キロメートルの深さにプレート境界(プレート間断層)が走っており、ここで大きな地震(プレート境界型地震)が起きる可能性があります。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
過去の駿河湾の地震 ― 震源の深さと震源タイプ
例えば、2009年8月11日に起きたは、マグニチュード約 6.5で、震源の深さはおよそ 23 km とされました。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
ただし、その地震は「プレート間の断層ではなく」、沈み込んだフィリピン海プレートの内部で起きた“スラブ内地震”と分析されています。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
震源が浅ければ必ずプレート境界とは限らない ― 駿河湾の地震の多様性
駿河湾近辺では、浅い地震(例えば深さ5〜10kmあたり)の震源は、必ずしもプレート境界付近とは限らず、陸側プレート内や海溝に近い“スラブや付加体の構造内”で起きることもあります。たとえ震源が浅くても、地震のタイプ(プレート間・スラブ内・内陸断層など)によって意味合いは異なります。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
つまり、「浅い地震=プレート境界型」という単純な見方は誤りで、個別の震源メカニズムをみる必要があります。
浅い地震の多発 ― 何が要因か?現状と研究の知見
防災科学技術研究所などによる調査では、駿河湾西岸およびその周辺で多数の微小〜中規模地震の震源分布が確認されており、その多くはプレートの沈み込みに伴う複雑なスラブ構造や張力状態に起因するとされています。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
ただし、これらの地震がすべて大地震の前兆である、あるいは今後必ず大きなプレート間地震につながる、という科学的な確証はありません。スラブ内や付加体内部の地震は、必ずしも破壊の連鎖を意味するものではない、というのが現在の理解です。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
「深さ5〜10kmで多数」と聞いたときに押さえておきたいポイント
- 震源のタイプが重要:プレート境界、スラブ内、内陸断層…どこで起きたかで意味は大きく異なる。
- 浅いからといって必ず“直下型大地震”ではない:浅い地震でも被害が小さいものは多く、また構造次第ではリスクが低い場合もある。
- 地震の頻度の増加=ストレス集中とは限らない:調整運動やスラブ内部の応力解放としてごく普通の活動の可能性もある。
まとめ ― 駿河湾での浅い地震多発は“プレート境界型”とは限らないが、注意は必要
駿河湾周辺で「深さ5〜10kmで地震が多い」という現象が観測されていても、それが必ずしもプレート境界付近で起きているとは断定できません。過去の例でも、震源は沈み込んだプレート(スラブ)の内部だったことが示されています。
しかし、駿河湾・南海トラフ地域は将来の大地震の警戒地域であることは変わらず、浅い地震が続く場合は地震対策や最新の地震情報に注意を払うことが重要です。
総じて、「浅さ」だけで地震の意味を判断せず、震源のメカニズムや地域の地質構造にも目を向けることが、適切な理解につながります。


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