インドネシアの外交政策は、ジョコ・ウィドド前大統領の時代から現在に至るまで、国際秩序における独自の立ち位置を築いてきました。特に、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)への加盟を見送った背景と、ジョコ氏が「バンドン精神こそ私がアフリカ訪問に携えてきたものである」と述べた意義について詳しく解説します。
BRICS加盟を見送った背景
ジョコ・ウィドド前大統領は、インドネシアの経済発展に力を注ぐ一方で、BRICS加盟には慎重な姿勢を取り続けました。2023年、ロシアや中国などから加盟の打診を受けましたが、インドネシアはこれを断りました。主な理由は、BRICS加盟による米国との関係悪化を避けるためでした。特に、インドネシアは米国との経済関係を重視しており、BRICS加盟によってその関係が損なわれる可能性を懸念していました。
「バンドン精神」の継承とアフリカ訪問
ジョコ氏は、1955年にインドネシアのバンドンで開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の精神を重視してきました。この会議では、非同盟運動の原則として、すべての民族の自決、非抑圧民族の独立と自由、すべての国家の平等と主権尊重、国連憲章に基づく国際平和秩序、自由と平和の相互依存、恐怖からの自由と平和共生・友好協力による国際平和、不干渉・大国からの自立、核兵器の禁止などが採択されました。ジョコ氏は、これらの原則を外交の柱として位置づけ、「バンドン精神こそ私がアフリカ訪問に携えてきたものである」と述べました。
OECD加盟への道と外交の多角化
ジョコ氏は、インドネシアの建国100年を迎える2045年までに先進国の仲間入りを果たすという目標を掲げ、経済協力開発機構(OECD)への加盟に熱心に取り組みました。2024年2月、OECDはインドネシアとの加盟協議開始を正式に決定しました。OECD加盟は、インドネシアの中立外交、橋渡し外交の原則と一致し、先進国クラブに足場を築くことができれば、グローバルサウスの利害を国際経済秩序に反映させるというインドネシアの狙いも実現することができます。
プラボウォ政権下でのBRICS加盟
2024年10月に就任したプラボウォ新大統領は、ジョコ政権の政策を継承しつつ、BRICS加盟に踏み切りました。2025年7月のBRICS首脳会議にはインドネシアが初めて参加し、BRICSの一員としての役割を果たすこととなりました。プラボウォ政権は、BRICS加盟を通じて外交の多角化を進め、国際社会におけるインドネシアの発言力を高めることを目指しています。
まとめ
インドネシアがジョコ・ウィドド前大統領の時代にBRICS加盟を見送った背景には、米国との経済関係の維持と「バンドン精神」に基づく非同盟外交の継承がありました。ジョコ氏はアフリカ訪問の際、「バンドン精神こそ私がアフリカ訪問に携えてきたものである」と述べ、非同盟運動の原則を外交の柱として位置づけました。プラボウォ政権下では、BRICS加盟を通じて外交の多角化を進め、国際社会におけるインドネシアの発言力を高めることを目指しています。
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