築年数が古く、旧耐震、残置物が多い、下水道未接続、災害リスクのある区域に位置するといった条件が重なる戸建ては、一般的な中古住宅とは売却の考え方が大きく異なります。数万円の現状買取を提示される一方、残置物を撤去すれば100万円以上で仲介できると言われるなど、査定額に大きな差が生じることもあります。
こうした物件では、単純に「一番高い査定額」を選べばよいわけではありません。売却価格から実際に手元へ残る金額、売れるまでの期間、片付けに必要な費用と労力、売れなかった場合の負担、住み続ける場合の将来費用まで比較することが重要です。
この記事では、築古・残置物ありの戸建てについて、現状のまま売却する方法、片付けて仲介する方法、住み続ける方法を比較し、後悔しにくい判断手順を解説します。なお、不動産の価格や契約条件は物件ごとの差が非常に大きいため、個別の売却では宅地建物取引業者、必要に応じて不動産鑑定士・司法書士・税理士などの専門家へ確認してください。
- 築古戸建ての「査定額」と「手取り額」は別物
- まず「手取り額」を3パターンで計算する
- 150万円という仲介査定は「その価格で売れる保証」ではない
- 仲介を選ぶなら「150万円で売れなかった場合」を先に聞く
- 残置物撤去は「本当に全部必要なのか」を確認する
- 旧耐震の戸建ては建物価値だけで判断しない
- 土砂災害警戒区域は売却できないという意味ではない
- 下水道未接続も費用を確認してから判断する
- 墓地隣接などの条件は買主によって評価が大きく変わる
- 住み続ける場合は「家賃ゼロ」だけで判断しない
- 金額以外の「住み続けるコスト」も判断材料になる
- 迷ったときは「5万円・70万円・住み続ける」の3択にしない
- 不動産会社には具体的な数字を書面でもらう
- 所有権移転と残置物の扱いは曖昧にしない
- 引っ越し先を先に試算すると判断しやすくなる
- 決断前に行いたいチェックリスト
- まとめ:売却価格ではなく「手取り・労力・今後の住宅費」で決める
築古戸建ての「査定額」と「手取り額」は別物
不動産会社から「150万円程度で売れる可能性がある」と説明された場合、まず確認したいのが、その150万円が買取価格ではなく仲介で想定している売出価格または成約予想価格ではないかという点です。
仲介の場合、不動産会社が150万円で買い取ってくれるわけではありません。市場に物件を出し、購入希望者が現れて初めて売買が成立します。150万円で募集しても、値下げ交渉によって100万円で成約することもあれば、長期間買い手が見つからないこともあります。
一方、「現状のまま5万円で買い取る」という条件なら、買主が実際に5万円で購入する意思を示している可能性があります。この場合は価格こそ低いものの、残置物処分や再販売のリスクを買主側が負担する契約になっていることがあります。
したがって比較すべきなのは「5万円対150万円」ではありません。現状買取で最終的に残る金額と、仲介による現実的な成約価格から売却までに必要な全費用を引いた金額を比較する必要があります。
まず「手取り額」を3パターンで計算する
売却方法を比較するときは、不動産会社にそれぞれの方法について費用を一覧化してもらうと判断しやすくなります。
| 選択肢 | メリット | 主な負担・リスク |
|---|---|---|
| 現状のまま買取 | 早く処分しやすく、片付けの負担を減らせる可能性がある | 売却価格が非常に低くなりやすい |
| 残置物撤去後に仲介 | 現状買取より高く売れる可能性がある | 撤去費用、売却期間、売れ残りリスクがある |
| 住み続ける | 新たな住宅費を抑えられる可能性がある | 修繕、災害、老朽化、将来の処分などを引き受ける |
例えば仲介で150万円の成約を想定していても、残置物撤去や清掃などに60万円、不動産会社への仲介手数料その他の費用がかかるなら、手取りは大きく減ります。さらに実際の成約価格が想定より下がれば、手取りもその分少なくなります。
逆に現状買取についても「5万円もらえる」とだけ考えてはいけません。登記関係費用、境界・測量に関する条件、残置物の所有権、契約不適合責任に関する契約内容などを確認し、売主側に追加負担がないか契約書で確認する必要があります。
150万円という仲介査定は「その価格で売れる保証」ではない
築古物件では、不動産会社によって査定額が大きく異なることがあります。その理由の一つは、建物そのものだけでなく、土地としての需要や再利用の可能性、解体費、接道条件などを含めて評価するためです。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、実際の不動産取引価格や成約価格、地価、防災情報などを確認できます。近隣の土地・戸建てが実際にいくら程度で取引されているのかを調べれば、査定価格を検討する材料になります。[参照:国土交通省 不動産情報ライブラリ]
ただし、国土交通省も不動産価格は面積、形状、前面道路など個別要因や取引事情によって異なると注意を促しています。近所で150万円の成約事例があったとしても、自分の物件が同額で売れるとは限りません。
仲介を選ぶなら「150万円で売れなかった場合」を先に聞く
仲介を検討する場合には、「いくらで売れそうですか」だけでなく、「何か月以内に、いくらなら成約する可能性が高いですか」と質問することが重要です。
さらに「150万円で3か月売れなかった場合はどうするのか」「100万円まで下げた場合の手取りはいくらか」「50万円でも売れなかった場合はどうするのか」と段階的なシナリオを作ります。
特に残置物撤去を先に行う場合、数十万円を支払った後に買主が見つからなくても、その撤去費用は戻ってきません。そのため、先行投資する金額と売却成功時の増加額が見合っているかを確認する必要があります。
残置物撤去は「本当に全部必要なのか」を確認する
ゴミや家具などが大量に残っている住宅では、残置物撤去だけで高額になる場合があります。しかし、仲介するために必ず家全体を新品同様に片付けなければならないとは限りません。
購入者が土地利用や大規模リフォーム、解体を前提としているなら、清掃や内装補修へ多額のお金をかけても売却価格に反映されにくいことがあります。逆に中古住宅として居住する買主を想定するなら、室内を確認できる状態にすることが重要になる場合があります。
そのため不動産会社には、「撤去しなければ売れない」のか、「撤去した方が売れやすい」のかを区別して説明してもらいましょう。可能なら残置物ありの場合の想定成約価格と、撤去後の想定成約価格を両方提示してもらうと比較しやすくなります。
旧耐震の戸建ては建物価値だけで判断しない
一般に旧耐震基準という言葉は、1981年5月31日以前の基準で建てられた住宅について使われます。国土交通省も、1981年以前に建設された住宅の中には耐震性が不十分な住宅があるとして耐震化を進めています。[参照:国土交通省]
ただし「旧耐震だから価値がゼロ」という意味ではありません。土地の立地、接道、面積、再建築の可否、周辺需要などによって不動産全体としての価値は変わります。
築古住宅では建物をそのまま利用する買主だけでなく、リフォーム前提の買主や土地として検討する買主も考えられます。査定を依頼するときには「建物付き土地としての評価」「土地としての評価」「現状の住宅を利用する場合の評価」を分けて聞くと理解しやすくなります。
土砂災害警戒区域は売却できないという意味ではない
土砂災害警戒区域に指定されていることは買主の判断材料になりますが、指定されているだけで不動産を売却できなくなるわけではありません。
一方で災害リスクを気にする買主は多く、立地条件によって市場価格や売却期間へ影響する可能性があります。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格だけでなく土砂災害警戒区域などの防災情報も地図上で確認できます。[参照:不動産情報ライブラリ]
自分の物件について「土砂災害警戒区域だから売れない」と一括りにするのではなく、周辺で同様の条件を持つ不動産がどの程度取引されているのかを確認する方が現実的です。
下水道未接続も費用を確認してから判断する
下水道が利用できる地域で未接続の場合などは、買主が接続工事を必要とする可能性があります。その費用を買主が負担すると考えれば、その分を価格交渉の材料にされることがあります。
ただし接続に必要な工事内容や義務、費用負担は地域や現在の排水設備などによって異なります。自治体の下水道担当部署へ、対象物件についてどのような手続き・工事が必要なのか確認することが重要です。
売却前に自費で工事をするのか、それとも現状のまま条件を説明して売るのかについても、工事費と売却価格への影響を比較して決めます。
墓地隣接などの条件は買主によって評価が大きく変わる
墓地が隣接していることを気にする人もいれば、ほとんど気にしない人もいます。そのため、こうした条件は住宅設備のように一律の金額で減点できるものではありません。
むしろ築古物件の場合、駅までの距離、買い物環境、土地面積、駐車スペース、接道、再建築の可否などとの組み合わせで評価されます。
一社の査定だけで「この家には価値がない」と判断するのではなく、築古戸建てや空き家、地方物件などを扱った実績のある複数の不動産会社へ査定を依頼する意味があります。
住み続ける場合は「家賃ゼロ」だけで判断しない
住宅ローンがなく、自分の家に低コストで住めることは大きなメリットです。売却して賃貸住宅へ引っ越せば、毎月の家賃や更新費用など、新しい住宅費が発生する可能性があります。
例えば月5万円の賃貸へ移れば、単純計算では年間60万円の家賃です。現在の家を売却して70万円程度が残ったとしても、家賃だけで比較すれば長期間の生活費を賄える金額ではありません。
しかし築49年程度の住宅なら、今後も現在と同じ維持費で住める保証はありません。屋根、外壁、給排水設備、給湯器、電気設備、シロアリ被害など、まとまった修繕費が必要になる可能性があります。「現在の住宅費」ではなく、今後5年・10年で想定される住宅関連費を比較することが大切です。
金額以外の「住み続けるコスト」も判断材料になる
住宅の選択では、売却額だけでなく生活環境も重要です。近隣関係に強いストレスを感じている、片付けや修繕の管理が負担になっている、といった事情は金額には表れませんが、住み続けるかどうかを考える重要な要素です。
反対に、引っ越した後の家賃負担や新しい地域への適応が大きな負担になる人もいます。現在の家を手放せば、基本的には同じ条件で買い戻すことはできません。
そこで「家がいくらで売れるか」と「この家に今後も住みたいか」を一度切り離して考える方法があります。仮に売却価格が0円だったとしても引っ越したいのか、逆に100万円程度で売れるとしても住み続けたいのかを考えると、自分が重視している要素が見えやすくなります。
迷ったときは「5万円・70万円・住み続ける」の3択にしない
提示された選択肢だけを見ると、「現状買取5万円」「片付けて仲介し手取り約70万円」「そのまま居住」という三択に感じます。しかし、実際には中間案が存在する可能性があります。
例えば、別の会社から現状買取査定を取る、残置物ありのまま仲介する、一部だけ片付ける、残置物撤去業者から直接相見積もりを取る、といった方法です。
特に最初の買取業者が5万円だからといって、すべての買取業者が5万円とは限りません。同様に一社が150万円と査定しても、実際の市場価値が150万円と確定したわけでもありません。条件の特殊な物件ほど複数の査定を比較する価値があります。
不動産会社には具体的な数字を書面でもらう
判断する前に、仲介を提案している会社へ「150万円程度」という数字の根拠を確認しましょう。近隣成約事例、想定する買主、想定売却期間、売出価格と予想成約価格の違いなどを聞きます。
また、残置物撤去費、仲介手数料、登記関係費用、その他想定される費用を一覧化し、「150万円で成約した場合」「100万円の場合」「50万円の場合」の手取り額を計算してもらうと比較しやすくなります。
現状買取についても同じです。売買代金だけではなく、残置物を本当にそのまま残せるのか、売主側で撤去する物はないか、土地・建物の不具合についてどのような契約条件になるのかを契約前に確認します。
所有権移転と残置物の扱いは曖昧にしない
「家をそのまま買い取ります」という口頭説明だけで契約を進めるのは避けたいところです。家の中に大量の家具や家財が残っている場合、それらを誰が処分するのかを明確にします。
例えば「売却後は買主が自由に処分する」という条件なら、その対象となる残置物の範囲を契約書等で確認します。売却後になって「これは売主が撤去する約束だった」とトラブルにならないようにするためです。
また、土地・建物の状態について売主がどの範囲まで責任を負う契約なのかも重要です。築古物件ほど建物や設備に予期しない問題が存在する可能性があるため、契約内容について理解できない部分は宅地建物取引士などへ確認しましょう。
引っ越し先を先に試算すると判断しやすくなる
「売るか残すか」を半年以上迷っている場合、家の価格だけを比較していると結論が出にくいことがあります。そこで先に、売却後の生活費を具体化します。
候補となる賃貸住宅を数件探し、家賃、管理費、敷金・礼金、保証料、引っ越し費用、火災保険などを計算します。現在の固定資産税や修繕費などと比較すれば、「家を手放した後に毎月いくら増えるのか」が分かります。
さらに5年間程度の総額で比較すると判断しやすくなります。売却時に数十万円多く受け取れることより、その後毎月発生する住宅費の方が大きな差になる可能性があるためです。
決断前に行いたいチェックリスト
特殊な条件を持つ築古戸建てでは、勢いで売却する必要はありません。一方、何年も判断を先送りすると老朽化が進み、残置物も増えてしまう可能性があります。
- 現状買取を2~3社以上で比較する
- 仲介査定も複数社から取得する
- 150万円という査定の根拠を確認する
- 残置物撤去を2~3社で見積もる
- 現状のまま仲介できないか確認する
- 再建築の可否や接道状況を確認する
- 下水道接続について自治体へ確認する
- 近隣の実際の成約価格を調べる
- 売却後の賃貸住宅費を5年程度で試算する
- 現在の家に5~10年住む場合の修繕リスクを考える
- 残置物と契約不適合に関する契約条件を確認する
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格に加えて、防災、都市計画、周辺施設などの情報を確認できます。査定を受け身で聞くだけでなく、公的なデータも判断材料として利用するとよいでしょう。[参照:国土交通省 不動産取引価格・成約価格情報]
まとめ:売却価格ではなく「手取り・労力・今後の住宅費」で決める
築古で残置物が多く、旧耐震、下水道未接続、土砂災害警戒区域など複数の条件を抱える戸建てでは、通常の住宅より査定価格に幅が出やすくなります。現状買取が数万円でも、それだけで物件の市場価値が数万円と決まったわけではありません。
一方、仲介で150万円程度という査定が出ても、その金額で必ず売れるわけではありません。片付け費用を先払いした後に価格を下げることになれば、当初想定した手取りを大きく下回る可能性もあります。
そのため、「現状買取の確定手取り」「仲介で価格別に計算した手取り」「住み続けた場合の今後5~10年の費用」の3つを数字にして比較することが有効です。
さらに、近所付き合いや住宅管理の負担から離れられることにも価値がある一方、現在の低い住宅費を失うことにも経済的な意味があります。不動産だけを見て判断するのではなく、売却後の住居まで含めて比較することが重要です。
最終決定の前には、少なくとも現状買取と仲介の双方で複数社から条件を取り、残置物撤去費も相見積もりを取ってみましょう。「5万円か150万円か」という二択ではなく、条件を数字に分解することで、その物件と今後の生活に合った選択肢を見つけやすくなります。


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