FIT廃止・RPS再導入で再生可能エネルギーは安くなる?低コスト化と市場移行の可能性を解説

エネルギー政策

日本の再生可能エネルギー政策を考えるうえで重要な論点の一つが、固定価格買取制度(FIT)による支援をいつまで続けるのかという問題です。太陽光発電などの導入拡大に大きな役割を果たした一方、再エネ賦課金による国民負担や、市場価格とは異なる価格で長期間買い取る仕組みについては以前から議論があります。

そこで選択肢として考えられるのが、FITによる価格保証を縮小・終了し、電力会社などに一定割合の再生可能エネルギー利用を義務付けるRPS(Renewables Portfolio Standard)型の制度と電力市場を組み合わせる方法です。制度設計上は十分可能ですが、単純にFITを廃止して以前のRPS制度へ戻せば再エネが安くなる、とまでは言えません。

実際、日本の政策はすでにFITだけに依存する段階から変化しています。大規模な事業用太陽光や風力などでは入札制度が利用され、市場価格に連動して収入を得るFIP制度も導入されています。さらに経済産業省は、2027年度以降、一定の事業用地上設置型太陽光をFIT・FIPによる支援対象から外す方針を示しています。[参照]

そもそもFITとRPSは何が違うのか

FITは、一定の条件を満たす再生可能エネルギーの電力について、国が定めた価格と期間を基本として買い取る仕組みです。発電事業者にとって将来の収入を予測しやすく、資金調達もしやすくなるため、再エネの導入を急速に増やしたい段階では強力な政策手段となります。

一方のRPSは、電気事業者などに対して一定量・一定割合の再生可能エネルギー利用を義務付け、その義務を達成する過程で事業者同士の競争を働かせる考え方です。日本でもFIT以前にはRPS制度が存在し、2012年にFIT制度が開始された後、制度が移行しました。

両者の大きな違いを簡略化すると、FITは「価格を政策側が支えて導入量を増やす」方法、RPSは「導入量・比率などの義務を設定し、価格形成には市場原理をより強く働かせる」方法と整理できます。

項目 FIT RPS型制度
政策の中心 買取価格・支援価格 再エネ導入量・比率の義務
発電事業者の収入 比較的予測しやすい 市場環境の影響を受けやすい
価格競争 制度設計によっては弱くなる 比較的働きやすい
投資リスク 比較的小さい 比較的大きくなりやすい
政策目標 導入促進に強い 競争と目標達成の両立を狙いやすい

RPSを再導入すれば再エネの低コスト化は進むのか

理論上、RPS型制度には低コスト化を促す仕組みがあります。例えば電力会社に「販売電力量の一定割合を再エネで調達する」という義務を設定した場合、義務をできるだけ安く達成するため、発電コストの低い事業者から電力や環境価値を調達する動機が生まれます。

仮にA社の太陽光が1kWh当たり9円、B社が11円、C社が14円で供給できるなら、同じ条件であれば安い事業者ほど選ばれやすくなります。さらに新規参入者が8円で供給できれば競争力を持つため、設備調達、施工、運転・保守などのコストを削減するインセンティブが働きます。

この点では、すべての発電所について政策側が価格を決める方式より、市場競争を利用する制度の方が低コスト電源を選別しやすいという考え方には合理性があります。ただし、競争を導入するだけで発電コストそのものが必ず下がるわけではありません。

FITを急に廃止すると逆にコストが上がる可能性もある

再エネ発電所は建設時に大きな初期投資を必要とします。売電収入が市場価格によって大幅に変動するようになると、銀行や投資家から見た事業リスクが上昇します。

例えば、20年間の収入をある程度予測できる事業と、翌年の売電価格すら大きく変動する可能性がある事業では、後者の方が融資金利や要求される投資収益率が高くなる可能性があります。設備価格が安くても資金調達費用が上昇すれば、最終的な発電コストが十分に下がらないことがあります。

特に洋上風力、地熱、中小水力などは、太陽光発電とは投資額、建設期間、開発リスクが大きく異なります。すべての再エネを同じ時期に完全市場化するより、技術の成熟度や競争環境に応じて支援を段階的に縮小する方が現実的です。

現在の日本はすでに「FITから市場へ」の途中にある

重要なのは、日本の選択肢が「FITを維持するか、RPSに戻るか」の二択ではないことです。現在はFITに加えてFIP(Feed-in Premium)制度が導入され、再エネ事業者自身が市場で電力を販売し、市場価格などを踏まえた一定のプレミアムを受け取る仕組みが利用されています。

FIPでは市場価格が高い時間帯に発電・販売したり、蓄電池を利用して売電時間を調整したりするなど、発電事業者が電力市場を意識する必要があります。その意味では、固定価格によって市場から切り離すFITから、再エネを通常の電力市場へ統合していくための中間的な制度と見ることができます。

さらに価格競争も導入されています。2026年度の事業用太陽光では、一定規模以上について入札で価格を決定する仕組みが採用されています。経済産業省は2027年度以降、事業用太陽光のうち地上設置についてFIT・FIP制度の支援対象外とする方針も示しています。[参照]

RPS型制度を再導入するなら「証書市場」の設計が重要

現代的なRPS制度を採用する場合、単に電力会社へ再エネ調達を義務付けるだけでなく、再生可能エネルギーの環境価値を証書として取引できる市場を組み合わせる方法が考えられます。

例えば、ある小売電気事業者に年間100万kWh相当の再エネ調達義務があるとします。自社で再エネ発電所を建設する以外に、他社から再エネ電力を購入したり、制度上認められた証書を取得したりして義務を達成できる設計にすれば、より低コストな方法を選択できます。

ただし、義務水準を低く設定しすぎれば再エネ投資が進まず、高すぎれば証書価格が急騰して最終的に電気料金へ転嫁される可能性があります。未達成時のペナルティ、証書の有効期間、電源別の扱い、新設電源を優遇するかどうかなどによって結果は大きく変わります。

低コスト化なら「FIT廃止」だけでは不十分

日本の再エネコストを下げるには、支援制度だけでなく発電所を建設する際の総費用を見る必要があります。設備価格、工事費、土地取得・賃借費、系統接続費、資金調達費、保守費用、許認可に要する期間などが最終的な発電コストを左右するためです。

例えば市場競争によって発電設備の価格を10%削減できても、送電網への接続や出力制御への対応、開発期間の長期化によって別の費用が増えれば、電力全体としては十分な低コスト化につながりません。

したがって政策としては、競争入札の拡大、FIPによる市場統合、送電網の整備、系統利用ルールの改善、蓄電池や需要調整の活用、許認可の効率化などを組み合わせることが重要になります。

既存FIT案件を途中で廃止する問題にも注意が必要

FITを廃止する議論では、これから建設される発電所への新規支援を終了することと、すでにFIT認定を受けて運転している発電所の契約条件を変更することを区別する必要があります。

既存事業者は制度で定められた条件を前提として融資を受け、発電所へ投資している場合があります。その条件を途中で大幅に変更すれば事業計画や金融契約へ影響し、政策に対する予見可能性を損なうおそれがあります。

そのため現実的な市場移行では、既存案件については原則として既存ルールを尊重しながら、新規案件からFIT対象を段階的に縮小し、入札、FIP、支援なしの市場取引などへ移していく方法が考えられます。

FIT・FIPの国民負担も市場移行を考える重要な要素

再エネ支援を考える際には、導入量だけでなく国民負担も重要です。経済産業省によると、2026年度の再エネ賦課金単価は1kWh当たり4.18円で、月400kWhを使用する世帯モデルでは月額1,672円、年間20,064円となります。[参照]

ただし、RPSへ変更すれば負担そのものが消えるわけではありません。再エネ利用義務によって電力会社の調達費用が増加すれば、その費用が電気料金などを通じて需要家へ転嫁される可能性があります。FITでは「賦課金」として見えやすい費用が、RPSでは電力調達コストの一部として現れることもあり得ます。

制度比較では、賦課金があるかないかではなく、再エネ導入のために社会全体が負担する総コストがどちらの制度で小さくなるかを見る必要があります。

まとめ:RPS再導入は可能だが、現実的には市場競争を組み合わせた段階的移行が重要

FITを廃止し、RPS型の再エネ利用義務を中心とする市場へ移行すること自体は制度設計上可能です。競争を通じて低コストな電源が選択される仕組みを作れるため、成熟した再エネについて低コスト化を促す選択肢にもなります。

一方、RPSへ変更するだけで必ず再エネ価格が下がるわけではありません。価格変動による資金調達コストの上昇、再エネ投資の停滞、証書価格の高騰など、新たなコストが発生する可能性もあります。

現在の日本では、すでにFIT一辺倒ではなく、FIP、競争入札、支援対象の縮小という方向へ制度が動いています。そのため現実的な低コスト化策としては、成熟した電源からFIT依存を縮小し、FIP・入札・市場取引を拡大しつつ、必要であればRPS型の導入義務や証書市場を組み合わせるという段階的な設計が考えられます。FITかRPSかという二者択一ではなく、「どの電源を、いつ、どこまで競争市場へ移行させるか」が再エネの低コスト化を考えるうえで中心的な論点になります。

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