マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」が基本となったことで、「4桁の暗証番号を忘れたら病院を受診できないのではないか」「カードリーダーで認証できなかったらどうなるのか」と不安を感じる人もいます。しかし、マイナ保険証の暗証番号が分からないことだけを理由に、保険診療を受ける手段がなくなる仕組みではありません。
厚生労働省は、暗証番号がロックされた場合でも顔認証や医療機関職員による目視確認を利用できること、さらにマイナ保険証による資格確認ができない場合にも複数の代替手段を用意しています。制度を正しく理解するには、「診療を受けられるか」と「受付で保険資格をどう確認するか」を分けて考えることが重要です。
この記事では、マイナ保険証の暗証番号を忘れた場合の受診方法、資格確認に失敗した場合の対応、資格確認書、そして国がマイナ保険証を導入した目的について、厚生労働省の公表情報を基に整理します。
マイナ保険証の4桁の暗証番号を忘れても受診方法はある
医療機関に設置されている顔認証付きカードリーダーでは、本人確認方法として顔認証を利用できます。そのため、4桁の暗証番号を覚えていなければ必ず受付できない、という仕組みではありません。
厚生労働省のFAQでは、暗証番号がロックされている場合であっても、顔認証付きカードリーダーによる顔認証、または窓口職員によるマイナンバーカードの顔写真の目視確認によって本人確認を行い、健康保険証として利用できると説明されています。[参照:厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問]
つまり「暗証番号を忘れた=病院に行けない」という理解は正確ではありません。カードリーダーの操作で困った場合には、その場で受付職員へ事情を伝えることが大切です。
暗証番号を3回間違えてロックされてもマイナ保険証は使える
マイナ保険証の本人確認で入力するのは、利用者証明用電子証明書に設定した数字4桁の暗証番号です。この番号を連続して間違えるとロックされる場合があります。
ただし厚生労働省は、ロックされた場合でも顔認証または職員による目視確認で資格確認を行うよう案内しています。したがって、病院の受付で思い出せない暗証番号を何度も試す必要はありません。
ロックそのものを解除したい場合には、住民票のある市区町村の窓口などで暗証番号を初期化・再設定できます。一定の条件を満たせば、スマートフォンアプリとコンビニのキオスク端末を使った再設定方法もあります。
顔認証もできなかったらどうなる?
顔認証がうまくいかないケースも想定されています。例えばカードリーダーが顔を認識しにくかったり、機器やネットワークに不具合が発生したりすることがあります。
厚生労働省は、顔認証ができず暗証番号も利用できない場合には、窓口職員へ声をかけるよう案内しています。状況に応じてカードの顔写真と本人を職員が目視で確認する方法があります。
重要なのは、マイナ保険証の機械で一度認証に失敗しただけで「受診できない」と判断しないことです。受付で「暗証番号が分かりません」「顔認証ができません」と伝え、利用できる資格確認方法を確認しましょう。
マイナ保険証で資格確認できない場合にも代替手段がある
マイナ保険証では、本人確認とは別に加入している健康保険の資格情報を確認します。しかし、機器の故障や通信障害、ICチップの不具合などによってオンライン資格確認が正常にできないこともあります。
その場合、厚生労働省は複数の代替方法を案内しています。例えばマイナンバーカードとマイナポータルの資格情報画面、またはマイナンバーカードと紙の「資格情報のお知らせ」を組み合わせて提示する方法があります。[参照:厚生労働省 資格確認方法について]
さらに、それらを持っていない初診患者についても「被保険者資格申立書」を記入する方法が示されています。再診で医療機関側が必要な資格情報を把握している場合には、口頭確認を行う方法もあります。
マイナ保険証を使わない「資格確認書」という方法もある
現在の制度では、マイナ保険証を持っていない人が保険診療を受けるための「資格確認書」も用意されています。資格確認書を医療機関や薬局で提示すれば、保険資格を確認できます。
厚生労働省によると、マイナンバーカードを取得していない人や、カードを持っていても健康保険証利用登録をしていない人などには、当分の間、資格確認書が無償で交付されます。[参照:厚生労働省 資格確認書について]
また、高齢者や障害のある人など、マイナンバーカードでの受診が困難で配慮が必要な人については、申請による資格確認書の交付制度があります。本人だけでなく、親族などの法定代理人や介助者等による代理申請も可能とされています。
2026年現在、従来の健康保険証はどうなっている?
従来型の健康保険証は2024年12月2日以降、新規発行されなくなりました。その後の経過措置を経て、従来の健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終了しています。
さらに、有効期限切れに気付かず従来の健康保険証を持参した場合の暫定的な対応も2026年7月31日で終了しています。そのため2026年8月現在、医療機関・薬局では基本的に、マイナ保険証を持つ人はマイナ保険証、それ以外の人は資格確認書を提示する仕組みです。[参照:厚生労働省 資格確認方法について]
ただし、これは「マイナンバーカードがなければ医療を受けられない」という意味ではありません。マイナ保険証を利用しない人のために資格確認書が用意されています。
なぜ国はマイナ保険証を導入したのか
国が示している主な目的の一つは、健康・医療情報を活用して医療の質や安全性を高めることです。本人が情報提供に同意すると、医師や薬剤師が過去の薬剤情報や特定健診情報などを確認できるため、初めて受診する医療機関でも情報共有を行いやすくなります。
例えば複数の医療機関から薬を処方されている場合、本人がすべての薬の名称を正確に覚えているとは限りません。マイナ保険証を利用して必要な情報を共有できれば、重複投薬などを避けるための判断材料になります。[参照:厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット]
ほかにも、高額療養費制度で窓口負担を自己負担限度額までに抑えやすくすること、医療費控除の手続きを簡素化すること、医療機関の資格確認事務を効率化することなどが導入目的として挙げられています。
便利さだけでなく「トラブル時の代替手段」を知ることが重要
デジタル化された制度では、暗証番号忘れ、カードの故障、通信障害、機器の操作が難しいといった問題が起こり得ます。そのため、制度を評価するときには通常時の便利さだけでなく、トラブルが起きたときにどのような代替手段が用意されているかを見る必要があります。
マイナ保険証については、顔認証、職員による目視確認、マイナポータルの資格情報、資格情報のお知らせ、被保険者資格申立書、資格確認書など、状況に応じた複数の方法が設けられています。
一方、実際の受付で説明が十分に伝わらなかったり、利用者が代替手段を知らなかったりすれば混乱する可能性があります。制度上の仕組みと個別の医療機関で実際に何が起きたかは分けて検証する必要があります。
「暗証番号が分からず受診できなかった」という出来事は個別確認が必要
個別の出来事について、本人や医療機関の記録を確認せずに「マイナンバーカードの暗証番号が分からなかったため診療を受けられず、それが死亡原因になった」と因果関係まで断定することはできません。
少なくとも現在の制度上は、4桁の暗証番号が分からないことだけで保険診療への道がなくなる仕組みではありません。厚生労働省自身が、暗証番号がロックされても顔認証または職員による目視確認でマイナ保険証を利用できると明記しています。
もし実際に医療機関の窓口で受診できなかった重大な事案があったのであれば、当時の症状、医療機関への連絡・来院状況、受付での説明、資格確認の方法、診療を行わなかった理由などを個別に確認しなければ、責任や因果関係を判断することはできません。
緊急性の高い症状では保険証の手続きより救急要請を優先する
意識がない、呼吸が苦しい、突然の激しい胸痛があるなど、生命に関わる可能性のある緊急症状では、マイナ保険証の暗証番号を探したり、再設定してから医療機関へ向かったりするべきではありません。緊急時は119番への救急要請など、必要な医療につながる行動を優先します。
家族が代理で対応する場面でも「暗証番号が分からないから受診できない」と自己判断せず、医療機関の受付や救急隊へ事情を伝えることが重要です。保険資格に関する手続きと、緊急に必要な医療を受けることを混同しないようにしましょう。
また、普段からマイナ保険証を利用するのが難しい事情がある場合は、加入している健康保険の保険者に資格確認書について相談しておく方法もあります。
まとめ:暗証番号を忘れても「病院に行けない」わけではない
マイナ保険証で使う4桁の暗証番号を忘れたり、入力を間違えてロックされたりしても、それだけで医療機関を受診する方法がなくなるわけではありません。顔認証や職員による目視確認など、暗証番号を使わない本人確認方法があります。
さらにマイナ保険証による資格確認そのものができない場合にも、マイナポータルの資格情報画面、資格情報のお知らせ、被保険者資格申立書などを使った代替方法があります。マイナ保険証を利用しない人については資格確認書という仕組みも用意されています。[参照:厚生労働省 マイナ保険証について]
国がマイナ保険証を導入した背景には、薬剤・健診情報などを本人の同意の下で医療従事者と共有しやすくすること、資格確認を正確・効率的にすること、高額療養費などの手続きを簡素化することがあります。一方で、利用者がトラブル時の方法を知らなければ不安や混乱につながるため、代替手段の周知も重要です。
暗証番号が分からないときは受診を諦めず、まず医療機関の受付へその旨を伝えてください。生命に関わる可能性のある緊急時には、暗証番号や保険資格の手続きを先に解決しようとせず、119番への救急要請など必要な医療につながる行動を優先することが重要です。


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