熊本地震から10年、熊本県は何をしてきた?2016年から令和8年熊本地震までの復旧・復興と防災対策

地震

2016年4月の平成28年熊本地震から10年。熊本県では、この期間に被災者の住まいの再建、道路・鉄道などのインフラ復旧、益城町をはじめとする被災地域のまちづくり、防災体制の見直し、震災の教訓を伝える施設の整備など、さまざまな復旧・復興・防災事業が進められてきました。

そして2026年7月28日には、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。気象庁はこの地震を含む一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しています。[参照:気象庁 令和8年熊本地震ポータルサイト]

大きな地震が再び発生すると、「2016年の熊本地震から何が変わったのか」「10年間でどのような対策が行われたのか」という疑問が生じます。そこで、熊本県や気象庁が公表している情報をもとに、この10年間の主な取り組みを整理します。

2016年の熊本地震はどのような災害だったのか

平成28年熊本地震の大きな特徴は、同じ地域で震度7の揺れが短期間に繰り返されたことです。熊本県によると、同一地域で震度7の地震がわずか28時間の間に2度発生したのは観測史上初めてでした。

さらに最大震度1以上の地震は、大分県での観測分を含め2018年4月30日までに4,400回を超えています。強い揺れだけでなく地震活動が長期間続いたことにより、避難生活の長期化や車中避難を含む屋外避難の増加といった問題も発生しました。[参照:熊本県 熊本地震から10年~記憶と教訓を未来へ~]

つまり熊本県の復興は、壊れた建物や道路を元に戻すだけではありませんでした。被災者の生活再建と同時に、次の災害に備える仕組みそのものを改善することも大きな課題になったのです。

被災者の「住まいの再建」が進められた

熊本地震後の重要な課題の一つが住宅再建でした。熊本県は被災者向けに「すまいの再建」支援策を設け、被災した世帯が県内で住宅を再建するための支援を行ってきました。[参照:熊本県 平成28年熊本地震「すまいの再建」支援策]

2020年2月時点の熊本県の発表では、仮設住宅などに入居した約4万8,000人のうち、約9割にあたる約4万3,000人が住まいの再建を実現したとされています。また12市町村で整備された1,715戸の災害公営住宅も完成へ向かいました。

住宅再建は短期間ですべて終わったわけではありません。2025年時点でも益城町の土地区画整理事業など公共事業との関係から住宅を再建できていない世帯があり、県は「最後の一人まで」の再建を課題として取り組みを続けていました。

道路・鉄道など交通インフラも復旧した

熊本地震では阿蘇地域を中心として道路や鉄道にも大きな被害が発生しました。このため、復興では地域間を結ぶ交通網の復旧も重要な事業になりました。

代表的なものとして、国道57号北側復旧ルート、国道57号現道、国道325号阿蘇大橋などの復旧・整備があります。またJR豊肥本線についても復旧が進められ、熊本県は復旧費用の地元負担分を支援しました。

こうした交通網の復旧には、単純に道路や鉄道を元に戻すだけでなく、通勤・通学、物流、阿蘇観光など地域経済を回復させる意味もありました。

益城町では「元に戻すだけではない」復興まちづくりが進められた

2016年の熊本地震で特に大きな被害を受けた地域の一つが益城町です。熊本県と益城町では、県道熊本高森線の4車線化や木山地区の土地区画整理などを進めてきました。

熊本県はこうした取り組みを「創造的復興」という考え方で進めています。災害前の状態へ単純に戻すのではなく、以前から存在していた地域の課題も含めて改善し、より安全で暮らしやすい地域へ再建するという考え方です。

2026年2月の知事会見でも、益城町の復興について県道整備などを例に挙げながら、地震前より安心・安全なまちづくりにつなげる取り組みが説明されています。一方、木山地区の区画整理など残っている事業もあり、10年を迎えた時点でも復興事業のすべてが完全に終了していたわけではありません。[参照:熊本県 2026年2月13日知事定例記者会見]

熊本県防災センターが整備された

この10年間で、防災面における象徴的な変化の一つが熊本県防災センターです。防災センターには災害対応の機能だけでなく、県民が災害について学ぶ「展示・学習室」も設置されています。

展示・学習室では、熊本地震や令和2年7月豪雨など熊本県で発生した災害について、展示パネル、映像、プロジェクションマッピング、VRなどを利用して学べます。自然災害が起こる仕組みだけでなく、実際の復旧・復興や災害への備えも扱っています。[参照:熊本県防災センター展示・学習室]

展示・学習室は2023年5月17日に開館し、2026年7月7日には来場者が3万人を超えました。単なる展示施設ではなく、2016年の震災経験を次世代へ伝え、防災人材を育成する役割も持っています。

熊本地震震災ミュージアムによる「記憶の継承」も進められた

災害対策では設備を整えるだけでなく、「過去の災害を忘れない」ことも重要です。熊本県では、県内各地に残る震災遺構や展示施設などをつなぐ「熊本地震記憶の回廊」という取り組みが行われています。

その中には南阿蘇村の「熊本地震震災ミュージアムKIOKU」や熊本県防災センター展示・学習室などがあり、熊本地震で何が起きたのか、その経験から何を学ぶべきなのかを伝えています。

2016年当時を知らない子どもが増えていくほど、記録と教訓を残す意味は大きくなります。震災から10年という節目を迎えた2026年にも、熊本県は「記憶」と「教訓」を未来につなぐための関連事業を実施しています。

地域防災計画も継続的に見直されている

熊本県では災害対策の基本となる「熊本県地域防災計画」を策定しており、その内容は固定されたものではなく、社会情勢や災害の教訓などを踏まえて修正されています。

2024年度、2025年度に続いて2026年度にも修正版が公表されています。つまり2016年に大地震を経験した後も、防災計画を一度作って終了するのではなく、継続的に更新する仕組みになっています。[参照:熊本県地域防災計画]

自治体の地震対策というと耐震化や備蓄だけを想像しがちですが、実際には情報収集、避難、救助、医療、物資輸送、避難所運営、行政機関同士の連携など多くの項目を事前に計画しておく必要があります。

防災訓練や避難所環境改善などの取り組みも続いている

熊本県の防災対策は建物や道路などのハード整備だけではありません。自主防災組織や地域の防災リーダーを対象とした研修、防災教育なども実施されています。

例えば県防災センターでは、熊本地震を学んで災害に備えるための教材や研修が用意されています。また県は避難所環境改善に関する啓発動画を制作するなど、実際に避難生活が発生したときの環境改善にも取り組んでいます。

2016年の熊本地震では長期間の避難や車中泊などが大きな課題となりました。そのため、地震を防ぐことのできない日本では「揺れた後にどう対応するか」まで準備しておくことが重要になります。

それでも2026年に大地震が発生したのは対策不足という意味ではない

ここで注意したいのが、防災対策を行ったからといって、地震そのものの発生を防止できるわけではないという点です。

2026年7月28日16時27分ごろには熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と氷川町で震度7を観測しました。その後も地震活動が活発になり、気象庁によると8月3日15時までに震度1以上を観測した地震は383回発生しました。

防災・減災政策の目的は「地震を起こさないこと」ではなく、建物の倒壊や人的被害を減らし、避難・救助を円滑にし、被災後の生活や社会機能をできるだけ早く立て直せる状態をつくることです。そのため、防災対策の評価は「再び地震が起きたかどうか」だけでは判断できません。

2026年の地震では2016年の経験を生かした対応も進められている

令和8年熊本地震の発生後、熊本県は被災者支援を開始しています。2026年8月には県全域への被災者生活再建支援法の適用が決定され、一定の要件を満たす全壊・大規模半壊・中規模半壊などの被災世帯が生活再建支援金の対象となりました。

また、災害救助法が適用された自治体では、被災住宅の応急修理制度も実施されています。さらに農業・畜産業などの事情から自宅敷地内で生活する必要がある被災者について、一定の要件のもとで自宅敷地内に建設型応急住宅を設置できる制度も案内されています。[参照:熊本県 令和8年熊本地震に係る被災者生活再建支援金]

2016年の震災で住宅再建や長期避難が大きな問題になった経験があるからこそ、今回の地震でも「被災直後の救助」だけでなく、その後の生活再建まで含めた支援が重要になります。

「10年間何もしていなかった」という理解は事実と異なる

2016年から2026年までの公的資料を確認すると、熊本県では住宅再建、災害公営住宅整備、道路・鉄道復旧、益城町の復興まちづくり、防災センター整備、震災ミュージアム、防災教育、地域防災計画の更新など、多岐にわたる事業が行われてきたことが分かります。

もちろん、これらの対策が十分だったのか、2026年の地震で実際にどの程度機能したのかという検証は別問題です。新たな災害が発生すれば、新たな弱点や改善点が見つかる可能性があります。

したがって今後重要になるのは、「対策をした・していない」という二択ではなく、2016年の教訓を反映した対策のうち何が2026年に機能し、何が機能せず、さらに何を改善する必要があるのかを検証することです。

まとめ:熊本県は10年間、復興と次の災害への備えを進めてきた

平成28年熊本地震から令和8年熊本地震までの約10年間、熊本県では被災者の住まいの再建、災害公営住宅、道路・鉄道の復旧、益城町の復興まちづくりなどが進められてきました。

同時に、熊本県防災センターの整備、熊本地震震災ミュージアムなどを通じた教訓の継承、防災研修、地域防災計画の継続的な見直しといった「次の災害に備える取り組み」も実施されています。熊本県自身も震災10年にあたり、この10年間を「復旧・復興の歩み」として振り返っています。[参照:熊本県 熊本地震から10年~記憶と教訓を未来へ~]

一方、2026年7月28日には再び最大震度7の「令和8年熊本地震」が発生しました。地震そのものを行政施策で止めることはできません。今後は今回の被害と対応を詳細に検証し、2016年以降に整備した制度・施設・計画が実災害でどう機能したのかを確認し、その結果をさらに次の防災・減災へ反映していくことが重要になります。

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