日本では福島第一原子力発電所事故以降、「既存原発の再稼働」のニュースが中心となってきたため、新しい原子力発電所を建設する計画はもう存在しないと思われがちです。しかし、2026年時点では状況が変化しています。
結論から整理すると、日本には現在も未完成の原子力発電所計画が存在し、さらに政府は次世代型原子炉の新設・建て替えを進める方針へ転換しています。実際に青森県の大間原子力発電所や島根原子力発電所3号機では工事・審査が進められており、山口県の上関原子力発電所計画も正式には残っています。
さらに2025年以降は、関西電力が福井県の美浜発電所で後継となる次世代原子炉を設置できるか検討するための現地調査を再開しました。ただし、「政府が全国各地に新しい原発を何十基も建設すると決定した」という状態ではありません。既存計画、建設中の発電所、建て替え候補、研究開発段階の次世代炉を区別して見る必要があります。
- 2026年現在、日本には新しく運転開始を目指している原発がある
- 青森県の大間原子力発電所は現在も建設計画が進んでいる
- 島根原子力発電所3号機も「新しく動く可能性がある原発」
- 山口県の上関原子力発電所計画も消滅していない
- 今後の新規計画で特に注目されるのが美浜原発の「後継機」
- 美浜で検討されているのは「SRZ-1200」という革新軽水炉
- 国の方針も「新しい原発を建てない」から変化している
- 政府は2040年代の新増設を想定し始めている
- 2026年には「次世代革新炉開発ロードマップ」も策定された
- 「新設」と「建て替え」は何が違う?
- では「まったく新しい土地」に原発を建てる計画はある?
- なぜ今になって新しい原発の建設が再び議論されているのか
- 新しい原発が計画されても、すぐ建設できるわけではない
- 現在の状況を一覧で整理
- 「新規原発がある」と「建設が決定した」は同じではない
- 今後は2030年代の投資判断が大きなポイントになる
- まとめ:日本には建設・計画中の原発があり、次世代炉の新設も政策上の選択肢になっている
2026年現在、日本には新しく運転開始を目指している原発がある
現在の日本で「まだ営業運転を始めていない原子力発電所」の代表例が、青森県の大間原子力発電所と島根県の島根原子力発電所3号機です。どちらも福島第一原発事故より前に計画・着工されたため、2020年代になって突然決定された新規計画ではありません。
一方で、両発電所とも計画そのものが消滅したわけではなく、2026年現在も営業運転を目指した事業が続いています。そのため「日本ではもう原子力発電所を一基も新しく完成させない」という理解は正確ではありません。
さらに政府の第7次エネルギー基本計画では、既存原発を活用するだけでなく、次世代革新炉の開発・設置を進める方針が明確になりました。[資源エネルギー庁・第7次エネルギー基本計画]
青森県の大間原子力発電所は現在も建設計画が進んでいる
新しい原発として最も分かりやすい例が、J-POWER(電源開発)が青森県大間町で建設している大間原子力発電所です。出力は138万3千kW、原子炉型式は改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)です。
J-POWERが2026年6月に公表した資料でも、原子炉建屋、取水・放水設備、地盤改良などの現場状況が公開されています。東日本大震災直前の2011年3月20日時点で総合工事進捗率は37.6%でした。その後は新規制基準への適合性審査や安全強化対策を踏まえて計画が進められています。[J-POWER・大間原子力発電所の建設状況]
大間原発には、一般的なウラン燃料だけではなくウラン・プルトニウム混合酸化物であるMOX燃料を使用できる特徴があります。2026年にもJ-POWERは大間原発に関する供給計画やMOX燃料利用計画を公表しており、事業が継続していることが確認できます。[参照]
島根原子力発電所3号機も「新しく動く可能性がある原発」
中国電力の島根原子力発電所3号機も、まだ営業運転していない原子炉です。島根3号機は2006年10月に本格工事が始まりましたが、福島第一原発事故後に導入された新規制基準への対応などにより、営業運転開始まで長期間を要しています。
2026年現在も建設・安全対策が続いており、中国電力は2028年度を目途に安全対策工事を完了し、2030年度までの営業運転開始を目指しています。[中国電力・島根3号機の建設状況]
原子力規制委員会による新規制基準適合性審査も続いており、2026年6月まで審査会合が開催されています。したがって、島根3号機についても「完成・稼働が確定した」という段階ではありませんが、正式に稼働を目指している新規電源です。[参照]
山口県の上関原子力発電所計画も消滅していない
もう一つ重要なのが、中国電力による山口県上関町の上関原子力発電所です。計画では1号機・2号機ともABWRで、それぞれ137万3千kWの出力を予定しています。
ただし大間原発や島根3号機とは状況が異なります。中国電力の公式情報では、上関原子力発電所の本体着工時期と営業運転開始時期は現在「未定」とされ、建設準備工事も2011年3月以降一時中断しています。[中国電力・上関原子力発電所計画概要]
一方、計画自体が撤回されたわけではありません。中国電力は2026年の経営説明でも、2050年カーボンニュートラルなどの観点から上関原子力発電所を「重要な経営課題」と位置付け、開発に取り組む考えを示しています。
2026年8月にも、準備工事に関連する2025年度の環境監視調査結果を山口県へ提出しています。中国電力は公式ページで、準備工事は現在一時中断中と説明しています。[参照]
今後の新規計画で特に注目されるのが美浜原発の「後継機」
ここまでの大間・島根3号・上関は、いずれも福島第一原発事故以前から存在する計画です。これに対し、今後の日本の原子力政策を考えるうえで重要なのが、既存原発を次世代型原子炉へ建て替える「リプレース」です。
具体的な動きとして、関西電力は福井県の美浜発電所で後継機を設置する可能性を検討しています。関西電力によると、2025年11月から後継機設置の検討に向けた自主的な現地調査を開始しました。[関西電力・美浜発電所後継機設置検討]
これは2026年時点で、日本における将来の新規原発建設を考える際に特に重要な具体例です。ただし、現時点では「建設決定」ではありません。地質などの現地調査、原子炉技術の開発状況、規制方針、投資環境などを確認したうえで、実際に建設するか判断されます。
美浜で検討されているのは「SRZ-1200」という革新軽水炉
関西電力を含む電力会社と三菱重工業は、次世代の革新軽水炉「SRZ-1200」を共同開発しています。名称の「1200」は120万kW級の出力を示しています。
革新軽水炉は、現在の軽水炉技術を基礎にしながら、福島第一原発事故の教訓を踏まえた安全設備などを設計段階から取り込む考え方です。まったく未知の方式へ一気に移行するのではなく、既存技術の延長線上で安全性を高めることが狙いです。
ただし、SRZ-1200も2026年現在は開発・検討段階です。美浜にSRZ-1200を建設することが正式決定しているわけではなく、原子力規制当局との議論や事業性の検討などを経る必要があります。
国の方針も「新しい原発を建てない」から変化している
日本の原子力政策は近年大きく変化しました。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーと原子力を二者択一とせず、脱炭素電源を最大限活用する方針が示されています。2040年度の電源構成では、原子力を2割程度とする見通しです。[参照]
特に重要なのが次世代革新炉の建設に関するルールです。政府は、廃炉を決定した原子炉を持つ電力事業者について、同じ事業者が運営する原子力発電所の敷地で次世代革新炉へ建て替えることを可能とする方向性を示しています。[資源エネルギー庁による解説]
つまり政策上も、既存原発を再稼働させるだけでなく、将来的に新しい原子炉を建設することが正式な選択肢になっています。
政府は2040年代の新増設を想定し始めている
さらに2026年になると、政府の議論は一段具体化しています。経済産業省が2026年6月に示した原子力政策の資料では、「2040年代に原子力を新増設するために、足元での投資決定ができる制度的環境の整備が必要」との方向性が示されています。[経済産業省・2026年6月資料]
原子力発電所は、建設を決めて数年で完成する設備ではありません。炉型選定、地質調査、環境調査、自治体や地域への説明、規制審査、建設などに十数年以上かかる可能性があります。そのため2040年代に新しい原発を運転したければ、2030年代に入ってから考え始めるのでは遅いという事情があります。
資源エネルギー庁のエネルギー白書でも、原子力発電所は十数年から20年程度の長いリードタイムが必要になるとして、次世代革新炉の開発・設置へ取り組む方針を説明しています。[参照]
2026年には「次世代革新炉開発ロードマップ」も策定された
政府は2026年4月、「次世代革新炉開発ロードマップ」を公表しました。これは将来の原子力利用について、単に「新しい技術を研究する」という段階から、どのタイプの原子炉をどのような時間軸で実用化していくかを整理したものです。[経済産業省・次世代革新炉開発ロードマップ]
次世代革新炉には革新軽水炉だけでなく、小型軽水炉(SMR)、高速炉、高温ガス炉など複数の方式があります。それぞれ技術成熟度や目的が異なるため、すべてが同時期に商用原発として建設されるわけではありません。
特に比較的既存技術に近い革新軽水炉については、将来の建て替え候補として現実性が高い一方、SMRや高速炉などは研究開発・実証をさらに進める必要があります。
「新設」と「建て替え」は何が違う?
原発に関するニュースでは、「新設」「増設」「リプレース」という言葉が使い分けられています。
| 言葉 | おおまかな意味 | 例 |
|---|---|---|
| 新設 | 新しい原子力発電所・原子炉を建設する | 新規地点への発電所建設など |
| 増設 | 既存発電所に原子炉を追加する | 既存サイトの3号機・4号機など |
| リプレース | 廃炉となる原子炉の代わりに新型炉を建設する | 美浜発電所の後継機構想 |
| 再稼働 | 既に存在する原子炉を再び運転する | 既設原発の新規制基準対応後の運転再開 |
特に「再稼働」と「新設」はまったく違います。現在ニュースになる原発の多くは既存炉の再稼働ですが、大間や島根3号は営業運転前の原子炉で、美浜後継機は将来の新しい原子炉を検討する案件です。
では「まったく新しい土地」に原発を建てる計画はある?
ここが質問を理解するうえで重要です。2026年時点の政府政策で具体化している中心は、全国の未利用地を探して新規原発サイトを次々開発する方式ではなく、既存の原子力発電所サイトや、同じ電力事業者が運営する原発サイトを活用した建て替えです。
既存サイトには送電線、港湾設備、原子力関連の人材やインフラがあり、地域も長年原子力発電所と関わってきました。一方、新規地点へ原発を建設する場合には、立地選定から地域との合意形成まで極めて長い時間を必要とします。
そのため、当面の次世代原発については、美浜のような既存サイトを利用するリプレースが現実的な候補になっています。ただし、政府が将来にわたり完全な新規立地を法律で禁止しているという意味ではありません。
なぜ今になって新しい原発の建設が再び議論されているのか
背景の一つが、既存原発の老朽化です。現在運転している原子炉を再稼働しても、永久に使えるわけではありません。今後2040年代以降になると、長期間運転した原子炉が次々と運転終了時期を迎える可能性があります。
資源エネルギー庁によれば、2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年へ到達します。その後も古い原子炉が順次廃炉になれば、原子力の発電能力は減少していきます。[参照]
もう一つが電力需要です。データセンターや半導体工場、生成AIの普及、産業の電化などによって、中長期的に国内電力需要が増加する可能性が指摘されています。政府は再生可能エネルギーだけか原子力だけかという選択ではなく、再エネ・原子力など脱炭素電源を組み合わせて確保する方針を取っています。
新しい原発が計画されても、すぐ建設できるわけではない
国が原子力利用を推進する方針を示したからといって、電力会社が自由に原発を建設できるわけではありません。原子炉を設置するためには原子炉等規制法に基づく原子力規制委員会の審査を受け、新規制基準を満たす必要があります。
地震や津波、火山、重大事故対策、電源喪失対策など多数の項目が審査されます。さらに建設後も使用前の検査などが必要です。大間原発や島根3号機が長期間にわたって審査・工事を続けていることからも、計画から営業運転まで非常に長い時間が必要であることが分かります。
加えて、原発政策では地域の理解も重要な要素です。第7次エネルギー基本計画でも、次世代革新炉について地域の産業や雇用への貢献、地域の理解を得ることなどが重視されています。
現在の状況を一覧で整理
2026年8月時点で注目される主な案件を整理すると、次のようになります。
| 発電所・構想 | 所在地 | 2026年時点の状況 |
|---|---|---|
| 大間原子力発電所 | 青森県大間町 | 建設・規制対応を継続 |
| 島根原子力発電所3号機 | 島根県松江市 | 建設・適合性審査中、2030年度までの営業運転開始を目標 |
| 上関原子力発電所1・2号機 | 山口県上関町 | 計画は存続、準備工事は一時中断、本体着工・運転開始は未定 |
| 美浜発電所後継機 | 福井県美浜町 | 次世代革新炉の設置可能性を検討する現地調査を実施 |
| その他の次世代革新炉 | 未定を含む | 政府・電力会社・メーカーが研究開発と制度整備を推進 |
このうち大間・島根3号・上関は以前から存在する計画で、美浜後継機は今後のリプレース政策を象徴する新しい動きです。この違いを押さえておくと、日本の原発政策の現状が分かりやすくなります。
「新規原発がある」と「建設が決定した」は同じではない
原子力関連の記事を読む際には、計画、検討、調査、建設、審査、運転開始という段階を区別することが重要です。
例えば美浜後継機について「新原発建設へ」と報じられる場合がありますが、2026年時点では現地調査を行って事業成立性を検討している段階で、建設が最終決定されたわけではありません。反対に大間原発はすでに建設工事が始まった発電所なので、美浜とは段階が異なります。
上関原発も正式な計画は存在しますが、準備工事は中断しており、本体着工時期も未定です。単純に「計画がある原発の数」を数えるだけでは、実際に何基がいつ完成するのかは分かりません。
今後は2030年代の投資判断が大きなポイントになる
今後注目したいのは、美浜後継機のような案件が具体的な建設計画へ進むかどうかです。政府は2040年代の新増設を視野に入れ、2026年には投資判断を可能にする制度環境の整備が必要との議論を進めています。[参照]
原発は建設費が非常に大きく、計画から運転開始まで十数年以上かかる可能性があります。その間に電力価格や政策が変化するリスクもあるため、電力会社にとって投資回収の予見性は重要です。
したがって今後数年間は、「どの電力会社が、どの既存原発サイトで、どの次世代炉を建設する方針を正式決定するのか」が、日本の原子力政策を見る重要なポイントになります。
まとめ:日本には建設・計画中の原発があり、次世代炉の新設も政策上の選択肢になっている
2026年現在、日本で新規の原子力発電所計画が完全になくなっているわけではありません。大間原子力発電所は建設計画が継続し、島根原子力発電所3号機は2030年度までの営業運転開始を目指しています。上関原子力発電所1・2号機も計画自体は存続しています。
ただし、これらは主に福島第一原発事故以前から進められてきた案件です。近年の新しい動きとして特に注目されるのは、関西電力が2025年から現地調査を始めた美浜発電所の後継機構想です。[参照]
国の政策も変化しています。2025年の第7次エネルギー基本計画では次世代革新炉への建て替えが政策上位置付けられ、2026年には次世代革新炉開発ロードマップが策定されました。さらに経済産業省は2040年代の新増設を実現するため、現在から投資環境を整える必要性を示しています。[参照]
したがって日本の現状を一言で表すなら、「新規原発がなくなった」のではなく、以前からの未完成案件が残る一方、今後は既存原発サイトを中心とした次世代革新炉への建て替え・新増設が再び具体的な政策課題になっているという状況です。ただし、美浜後継機をはじめ将来案件の多くはまだ検討段階であり、実際の建設地点、炉型、着工時期、運転開始時期が確定しているわけではありません。


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