大分県の活断層で「死者最大3万人」想定、引っ越すべき?中央構造線断層帯の地震リスクと住まいの判断基準

地震

2026年8月31日、大分県内の活断層について「熊本地震と同様の揺れの可能性」「死者最大約3万人」「8万棟以上が全壊・焼失」とする報道があり、不安を感じた人も少なくないでしょう。特に大分市、別府市、由布市などでは最大震度7が想定されるケースがあると報じられています。[FNNプライムオンライン・2026年8月31日報道]

しかし、この数字は「近いうちに必ず地震が起きて3万人が亡くなる」という予測ではありません。地震被害想定は、防災対策を考えるために一定の地震・季節・時刻・建物条件などを設定し、その条件でどの程度の被害が生じ得るかを計算したシナリオです。

報道を見ただけで「大分県から直ちに引っ越したほうがよい」と結論づける必要はありません。一方で、住んでいる建物が旧耐震の木造住宅である、津波浸水想定区域にある、急傾斜地に近いなど、個別の条件によっては住み替えを検討する合理的な理由があります。重要なのは「大分県に住んでいるか」だけではなく、自宅そのものの危険度を確認することです。

「死者最大3万人・8万棟以上全壊焼失」は何を意味している?

2026年8月31日のテレビ大分・FNNの報道では、大分県内の主な活断層として周防灘断層帯、日出生断層帯、中央構造線断層帯、万年山-崩平山断層帯が紹介され、その中でも中央構造線断層帯で地震が発生したケースの被害が大きいとされています。

報道では、中央構造線断層帯で地震が発生した場合、由布市、別府市、大分市で最大震度7が想定され、最悪の場合には死者約3万人、8万8400棟余りの建物が全壊・焼失するとされています。[FNNプライムオンライン・大分県の活断層]

非常に大きな数字ですが、「被害想定」と「地震発生予測」は区別しなければなりません。被害想定は、想定した地震が発生した場合にどのような被害になり得るかを防災目的で計算するものです。

「死者最大3万人」は3万人が亡くなるという予言ではない

地震被害想定には「最大」「最悪の場合」といった表現が登場します。これは地震が発生する日時や被害人数を予知しているわけではありません。

実際の人的被害は、地震が発生する時間、季節、住民のいる場所、建物の耐震化率、家具の固定状況、火災の発生、津波からの避難速度などによって大幅に変化します。

大分県自身も過去の地震・津波被害想定について、想定した最大クラスの地震・津波が「次に発生する地震・津波」という意味ではないと明記しています。[大分県・地震被害想定調査]

大分県には実際に大きな地震を起こし得る活断層がある

とはいえ、「単なる想定だから気にしなくてよい」ということでもありません。大分県東部から西部にかけては複数の活断層が分布しています。

地震調査研究推進本部によると、別府-万年山断層帯は豊予海峡付近から別府湾、大分平野を経て熊本県境付近まで広がり、複数の断層帯から構成されています。区間によってはM7級の地震が想定され、複数区間の活動についてさらに検討が必要とされているものもあります。[地震調査研究推進本部・別府-万年山断層帯]

つまり大分県で大規模な内陸地震が発生する可能性は、科学的に認識されている現実のリスクです。問題は「危険があるか、ないか」という二択ではなく、どの程度の危険があり、それに対してどこまで対策できるかです。

30年以内の発生確率が低く見えても「安全」という意味ではない

活断層の情報を見ると、「30年以内2~4%」「ほぼ0%~数%」といった数字が出てきます。この数字だけを見ると「ほとんど起きないのでは」と感じるかもしれません。

例えば地震調査研究推進本部の評価では、大分平野-由布院断層帯の東部はM7.2程度、30年以内の地震発生確率が0.04~4%、西部はM6.7程度、30年以内2~4%と評価されています。また野稲岳-万年山断層帯はM7.3程度、30年以内ほぼ0~3%とされています。[地震本部・将来の地震発生可能性]

ただし活断層の活動間隔は数百~数千年以上に及ぶため、発生確率には大きな不確実性があります。「4%だから大丈夫」「0.1%未満だから地震は来ない」という使い方をする数字ではありません。

低い発生確率でも大地震が起きることはある

今回の報道でも、大分地方気象台の防災官が過去の熊本地震を例に、低く見える確率でも油断できないことを説明しています。活断層の長期評価は、特定の日に地震が起きる確率を天気予報のように示すものではありません。

また、現在把握されている活断層以外で大きな地震が発生する可能性もあります。地震本部の長期評価は防災上非常に有用ですが、すべての地震を事前に場所・時刻まで予測できるものではありません。

「発生確率が低い=安全」でも、「震度7想定=もうすぐ発生する」でもありません。この2つを同時に理解することが重要です。

では大分県から引っ越したほうがいいのか

地震リスクだけを理由に「大分県民は県外へ引っ越すべき」とまではいえません。日本では大分県以外にも活断層や海溝型地震のリスクを抱える地域が多数あります。移転先にも別の地震、津波、洪水、土砂災害などのリスクが存在します。

そのため「大分県か県外か」よりも、現在の自宅と移転候補の住宅を具体的に比較するほうが合理的です。同じ大分市内でも、地盤、津波浸水、土砂災害、建物の構造・築年数によって危険度は変わります。

例えば、耐震性能の高い新しい住宅に住み、津波浸水想定区域や土砂災害警戒区域から外れ、家具も固定している人と、古い木造住宅で海岸近くに住んでいる人では、同じ「大分県在住」でもリスクは同じではありません。

引っ越しを検討するなら「県」ではなく「家」をチェックする

住み替えを考える際、最初に確認したいのが建物の耐震性能です。特に1981年6月以前の旧耐震基準で建築された住宅については、耐震診断を検討する価値があります。

ただし1981年以降なら絶対安全という意味でもありません。木造住宅では2000年にも建築基準に関する重要な変更が行われています。築年数だけでなく、構造、劣化状況、増改築歴、耐震診断・耐震改修の有無などを確認することが重要です。

賃貸住宅への住み替えを検討する場合も、「大分から遠くへ行く」ことだけを目的にするより、比較的新しく耐震性能を確認できる建物を選ぶほうが、地震対策として具体的な意味を持つ場合があります。

海沿いなら津波リスクも確認する

大分県の地震リスクは強い揺れだけではありません。大分県は、中央構造線断層帯、南海トラフ巨大地震、周防灘断層群主部などを対象として津波浸水想定も作成しています。[大分県・津波浸水想定]

特に沿岸部に住んでいる場合には、自宅が津波浸水想定区域に含まれているか、想定浸水深はどの程度か、徒歩で高台や津波避難ビルへ移動できるかを確認しておく必要があります。

住み替えを考えている人にとっては、同じ市内でも海岸から離れた場所や標高の高い場所を選択することで、津波リスクを大きく下げられる場合があります。必ずしも県外移住だけが選択肢ではありません。

地盤・液状化・土砂災害も住む場所によって大きく違う

地震の揺れ方は震源からの距離だけで決まりません。地盤の性質によって揺れが増幅されることがあります。また、地下水位が高い砂質地盤などでは液状化が発生する可能性があります。

山や崖に近い場所では、強い揺れによる斜面崩壊も考える必要があります。つまり「断層から少し離れているから安全」とは限りません。

大分県の地震被害想定調査では、震度だけでなく液状化、斜面崩壊、建物被害、地震火災、ライフライン、人的被害などについても調査されています。[大分県・地震被害想定調査の詳細]

引っ越しを考える価値が比較的高いケース

地震報道だけで慌てて転居する必要はありませんが、もともと住み替えを検討している場合には、防災面を条件に加えることには十分な意味があります。

現在の住宅・立地 検討したいこと
旧耐震の住宅 耐震診断・改修、建て替え、住み替えを比較する
建物の老朽化が著しい 専門家による建物状態の確認を検討
津波浸水想定区域 避難経路・避難場所を確認し、必要なら高台への住み替えも比較
液状化リスクが高い 地盤情報や建物基礎を確認
崖・急傾斜地に近い 土砂災害警戒区域などを確認
避難が難しい家族がいる 避難所までの距離や道路条件を重視
比較的新しく耐震性の高い住宅 転居より家具固定・備蓄などが有効な場合もある

つまり「地震が怖いから引っ越す」ではなく、現在の住宅に改善しにくい弱点が複数あるなら、住み替えを一つの防災対策として検討するという考え方が現実的です。

今すぐできる対策は引っ越し以外にも多い

大地震による人的被害を減らすために重要なのは、耐震化だけではありません。家具の転倒防止、寝室に背の高い家具を置かないこと、ガラス飛散防止、非常用の水・食料・携帯トイレの備蓄なども実行できます。

また、大規模災害では停電、断水、通信障害、道路寸断などが同時に起こる可能性があります。少なくとも数日間、自宅や避難先で生活できる備蓄を用意し、モバイルバッテリー、常備薬、現金、ライトなどをまとめておくと実用的です。

家族が別々の場所にいる時間帯に地震が起きる可能性もあります。「連絡が取れなかった場合はどこへ集合するか」「子どもを誰が迎えに行くか」といったルールも事前に決めておくと、発災後の混乱を減らせます。

大分県は2027年1月に新しい被害想定を公表予定

今回の報道で特に重要なのが、大分県が現在、地震・津波被害想定の見直しを進めていることです。2026年8月7日には第5回大分県有識者会議が開催され、中間報告やハザード推計結果などが検討されています。[大分県・第5回有識者会議]

FNN・テレビ大分の2026年8月31日の報道によると、新しい被害想定は2027年1月に公表される予定で、新たに国東半島沖で確認された活断層についても盛り込まれる予定です。[FNNプライムオンライン]

そのため、今後大分県内で住宅購入や長期的な転居を考えている場合は、現在公開されているハザード情報に加え、2027年に公表される新しい被害想定も確認する価値があります。

「安全な県へ逃げれば解決」とも限らない

日本で自然災害リスクを完全にゼロにできる地域を探すのは困難です。大分県から離れれば今回の活断層からは遠ざかりますが、移転先によっては別の活断層、南海トラフ、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの地震、洪水、土砂災害などのリスクがあります。

例えば地震リスクを避けようとして川沿いの新しい住宅へ移転した結果、洪水リスクが高くなるのでは本末転倒です。転居先についても地震だけでなく、洪水・津波・土砂災害などを総合的に比較する必要があります。

防災目的の住み替えでは「何県なら安全か」ではなく、「この土地、この建物なら現在よりリスクを下げられるか」と考えるのがポイントです。

まとめ:報道だけで大分県から急いで引っ越す必要はないが、自宅のリスク確認はしたほうがよい

2026年8月31日に報じられた大分県の活断層による被害想定は、決して無視してよい情報ではありません。中央構造線断層帯で想定地震が発生したケースでは、大分市、別府市、由布市などで最大震度7となり、最悪条件では死者約3万人、8万8400棟余りの建物が全壊・焼失するとされています。

しかし、これは「近いうちに震度7が来る」「3万人が実際に亡くなる」という予測ではありません。防災・減災対策のために設定された被害シナリオであり、地震の発生日時を予知した情報ではありません。

そのため、このニュースだけを理由に大分県から急いで転居する必要があるとはいえません。一方、自宅が古い木造住宅、津波浸水想定区域、液状化しやすい地盤、土砂災害警戒区域などに該当する場合には、耐震改修や住み替えを具体的に検討する意味があります。

まず確認したいのは、①建物の築年・耐震性、②自宅地点の想定震度、③津波浸水想定、④液状化、⑤土砂災害、⑥避難場所と避難経路です。そのうえで現在の住宅で対策できるのか、より安全な住宅へ住み替えるほうが合理的なのかを比較するとよいでしょう。

地震は発生日時を正確に予測できないからこそ、「怖いニュースを見たから逃げる」「確率が低いから何もしない」という両極端ではなく、自宅の具体的な弱点を把握し、耐震化・家具固定・備蓄・避難計画・必要に応じた住み替えによって被害を減らすことが現実的な対策になります。

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