使用済み核燃料はなぜ地層処分する?「分解できない」理由と再処理・ガラス固化の仕組みを解説

原子力

原子力発電所から出る使用済み核燃料について、「放射性物質を分解できないから、そのまま地下深くへ埋めるのでは」と考える人もいるでしょう。実際には、日本では使用済み核燃料をそのまま地層処分することを基本としているわけではありません。

日本の現在の政策では、使用済み核燃料を再処理して、まだ利用できるウランやプルトニウムを取り出し、残った高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて固化したうえで、地下300メートルより深い地層へ処分するという考え方が採られています。[参照:NUMO]

地層処分が必要なのは、単に「分解する技術がないから仕方なく埋める」というより、放射性物質の中には非常に長い時間をかけて放射能が減衰するものがあり、人間が何万年にもわたって地上で管理し続けるより、安定した地下環境と人工的なバリアを組み合わせて生活圏から隔離することが安全上合理的だと考えられているためです。

日本では使用済み核燃料をそのまま地下に埋めるわけではない

原子炉から取り出された使用済み核燃料には、核分裂生成物だけでなく、まだ燃料として利用できるウランや、原子炉内で生成されたプルトニウムなども含まれています。そのため日本では、使用済み核燃料を再処理し、これらを分離して再利用する「核燃料サイクル」を基本方針としています。

再処理を行うと、ウランやプルトニウムを取り出したあとに、放射能レベルの非常に高い液体状の廃棄物が残ります。この高レベル放射性廃液をガラス原料と高温で溶かし合わせ、ステンレス製容器の中で冷却・固化したものが「ガラス固化体」です。[参照:日本原子力研究開発機構]

したがって、より正確には「使用済み核燃料をそのまま埋葬する」というより、再利用できる物質を取り出し、最終的に残る高レベル放射性廃棄物を安定した形にして地層処分するという流れになります。

なぜ放射性物質を普通のゴミのように「分解」できないのか

一般的なゴミであれば、燃焼や化学反応によって別の物質に変えることができます。しかし、放射性物質の問題は原子の「化学的な状態」ではなく、原子核そのものにあります。

例えば水を電気分解すれば水素と酸素に分けられますが、これは原子同士の結び付きが変わっただけです。一方、放射性セシウムや放射性ヨウ素などを化学反応させても、その原子核が持つ放射能そのものを消すことはできません。

放射性物質は、原子核が自然に別の原子核へ変化する「放射性崩壊」によって時間とともに減っていきます。放射能が半分になるまでの時間を半減期といい、核種によって数秒程度のものから何万年、さらに長いものまで大きく異なります。

放射性物質を人工的に別の元素へ変えることはできない?

原理的には可能です。「核変換」または「核種変換」と呼ばれる技術では、中性子などを原子核へ当てることで、長寿命の放射性核種を別の核種へ変換する研究が行われています。

特に、高レベル放射性廃棄物から長寿命のマイナーアクチノイドなどを分離し、それらを高速炉や加速器駆動システムなどで核変換する「分離変換技術」が研究されています。成功すれば、廃棄物の長期的な放射能や発熱量を減らせる可能性があります。

ただし、現時点では大量の高レベル放射性廃棄物をすべて短期間で無害化できる実用技術にはなっていません。また核変換を行っても、最終的に処分が必要な放射性廃棄物が完全になくなるわけではありません。そのため、将来こうした技術が発展した場合でも、地層処分そのものが不要になるとは限らないと考えられています。

なぜわざわざ地下300メートルより深い場所へ埋めるのか

日本の地層処分では、高レベル放射性廃棄物を地表から300メートル以上深い安定した岩盤へ処分する計画です。目的は「人目につかない場所へ隠すこと」ではなく、放射性物質を人間の生活環境から長期間隔離することです。[参照:NUMO]

地下深部には、地表に比べて人間活動の影響を受けにくいという特徴があります。また、適切な地質環境を選べば地下水の動きが非常に遅く、酸素も少ないため、金属などの変化が進みにくい環境を利用できます。

そのため、長期間にわたって人が監視・操作を続けなくても、地下の岩盤そのものが放射性物質の移動を遅らせる「天然バリア」として働くことが期待されています。

ガラス固化体をそのまま岩盤に置くわけではない

地層処分では、ガラス固化体を直接岩盤の中へ裸で置くわけではありません。複数の障壁を組み合わせた「多重バリア」という考え方が採用されています。

バリア 主な役割
ガラス固化体 放射性物質をガラスの構造内部に取り込み、水へ溶け出しにくくする
オーバーパック 厚い金属容器でガラス固化体を覆い、地下水との接触を防ぐ
緩衝材 ベントナイトなどの粘土で包み、地下水や放射性物質の移動を遅くする
岩盤 地下水や放射性物質の移動を長期間にわたって遅らせる

NUMOでは、ガラス固化体、金属製オーバーパック、粘土の緩衝材、地下深部の岩盤を組み合わせることで、放射性物質が生活環境へ到達する可能性を十分低くする設計を検討しています。[参照]

つまり、一つの容器だけに安全性を依存するのではなく、仮に一つのバリアの性能が時間とともに低下しても、別のバリアによって放射性物質の移動を抑える考え方です。

ガラスに固めるのは放射能を消すためではない

高レベル放射性廃液をガラスに混ぜると聞くと、「ガラスにすれば放射能がなくなるのか」と思うかもしれません。しかし、ガラス固化によって放射能そのものがなくなるわけではありません。

目的は、液体のままでは扱いにくい放射性物質を、物理的・化学的に安定した固体へ閉じ込めることです。ホウケイ酸ガラスの構造の中へ放射性元素を取り込むことで、水に溶け出しにくくし、長期間安定した状態で保持します。[参照:日本原子力研究開発機構]

その後、ガラス固化体はすぐ地下へ運ばれるのではなく、放射能と発熱量を低下させるため一定期間貯蔵・冷却します。日本原子力研究開発機構では、30~50年程度貯蔵した後に地層処分する考え方が説明されています。

海外では使用済み燃料そのものを地層処分する国もある

日本は再処理を基本としていますが、世界中が同じ方法を採っているわけではありません。国によっては使用済み核燃料を再処理せず、そのまま高レベル放射性廃棄物として地層処分する「直接処分」を採用しています。

例えばフィンランドでは、使用済み核燃料を再処理せず、金属容器などへ封入して地下深部へ処分する計画が進められています。つまり地層処分という技術自体は「再処理した廃棄物だけ」に限定されたものではありません。

日本でも将来の選択肢として使用済み燃料の直接処分に関する研究は行われていますが、現在の基本政策は使用済み燃料を再処理し、ウラン・プルトニウムを回収した後の高レベル放射性廃液をガラス固化する方式です。

地上でずっと保管し続ける方法ではだめなのか

理論上、十分に管理された施設で高レベル放射性廃棄物を地上保管し続けることは可能です。実際、最終処分までの間は地上施設などで安全に貯蔵されています。

しかし、数百年、数千年、さらに長い期間にわたって人間が施設を維持し、電源や警備、設備更新、災害対策を続けることを将来世代に要求することになります。社会制度や国家そのものが非常に長期間同じ形で維持される保証もありません。

そのため、地層処分では人間がずっと管理し続けなくても、地下の自然環境と人工バリアによって受動的に安全性を確保することを目指しています。地層処分が国際的にも有力な最終処分方法とされている大きな理由です。

「10万年も危険」という意味ではない

高レベル放射性廃棄物について「10万年以上管理が必要」と聞くことがありますが、10万年間ずっと同じ強さの放射線を出し続けるわけではありません。放射性物質は時間とともに崩壊するため、放射能と発熱量は徐々に低下していきます。

特に処分後の初期には、比較的半減期の短い核分裂生成物の影響が大きい一方、長期間経過すると長寿命の核種が安全評価で重要になります。そのため、地層処分では数十年だけではなく、非常に長い時間を対象として地下水や岩盤の変化まで解析します。

「長期間の評価が必要」ということと、「長期間まったく変わらない危険度が続く」ということは区別して理解する必要があります。

まとめ|分解できないから単純に埋めるのではなく、再利用・安定化・隔離を組み合わせている

原子力発電所の使用済み核燃料を地層処分する理由を「分解できないから地下へ埋める」と表現すると、一部は合っていますが十分ではありません。放射性核種は通常の化学処理では放射能そのものを消せず、非常に長い半減期を持つ核種も存在するため、最終的には人間の生活環境から長期間隔離する必要があります。

一方、日本では使用済み核燃料を丸ごと廃棄するのではなく、再処理してウランやプルトニウムを回収し、残った高レベル放射性廃液をガラス固化体にします。それを金属容器と粘土で覆い、地下300メートルより深い安定した岩盤に処分する計画です。

さらに、長寿命核種を別の核種へ変える「分離変換技術」の研究も進められています。ただし現時点では、放射性廃棄物をすべて消滅させる実用技術はありません。現在の地層処分は「どうしようもないから埋める」のではなく、再利用できる資源を回収したうえで、残った廃棄物を安定化し、人工バリアと天然の岩盤を使って長期間生活圏から隔離するという工学的な処分方法と理解すると分かりやすいでしょう。

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