「オレオレ詐欺」という名称が広く知られるようになってから長い年月が経過しましたが、電話をきっかけとする特殊詐欺がなくなったわけではありません。むしろ手口は変化しており、親族になりすます古典的な方法だけでなく、警察官などを装う詐欺や国際電話を悪用するケースも確認されています。
警察庁が公表した2026年5月末時点の暫定値では、オレオレ詐欺だけでも1,472件、被害額54.6億円が認知されています。さらにニセ警察詐欺は3,667件、被害額403.2億円に達しています。つまり、電話を利用した詐欺は現在でも現実的な犯罪リスクです。
一方、「一度くらい詐欺電話を受けて犯人をからかってみたい」と考える人もいるかもしれません。しかし、意図的に詐欺電話を呼び込んだり、犯人との会話を長引かせたりすることにはメリットよりリスクがあります。本記事では、現在のオレオレ詐欺の実態とともに、不審電話を受けたときに安全を優先するための考え方を整理します。
オレオレ詐欺は現在も発生している
オレオレ詐欺は過去の犯罪ではありません。警察庁は、親族、警察官、弁護士などを装い、事件や事故の示談金などを名目として金銭をだまし取る手口をオレオレ詐欺として紹介しています。[参照:警察庁 SOS47 オレオレ詐欺]
2026年から警察庁は特殊詐欺の分類を整理し、被害が急増している「ニセ警察詐欺」を独立した手口として位置付けています。名称や分類が変化しているため、昔ながらの「息子や孫を名乗る電話」だけを警戒していればよいわけではありません。[参照:警察庁 特殊詐欺の認知・検挙状況等]
2026年5月末の警察庁暫定値では、特殊詐欺全体の認知件数は18,067件、被害額は1,514.7億円とされています。電話やSNSなどを利用した詐欺への警戒は、現在でも必要です。
昔ながらの「オレオレ」だけではない
典型的なオレオレ詐欺では、息子や孫などを名乗り、「携帯電話の番号が変わった」「会社のお金をなくした」「今日中に現金が必要」といった話から金銭を要求します。
一方、近年特に注意が必要なのが警察官などを名乗る手口です。「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕状が出ている」などと不安をあおり、金銭や個人情報を要求するケースがあります。警察庁によると、2026年3月末時点で認知されたニセ警察詐欺2,204件のうち、最初の接触手段が電話だったものは2,168件と9割を超えていました。
また、警察庁は「+」から始まる国際電話番号を悪用した手口にも注意を呼びかけています。知らない番号から電話が来た場合、「オレオレと言わなかったから詐欺ではない」と判断しないことが重要です。
詐欺電話を意図的に呼び込むのは避けたほうがよい
「詐欺師と話してみたい」という目的で、自分の電話番号を怪しいサイトなどに登録したり、不審な相手へ番号を伝えたりするのは危険です。安全に詐欺電話だけを呼び込む確実な方法はありません。
電話番号を犯罪者側に意図的に知らせれば、その情報がどのように扱われるかをコントロールできません。別の迷惑電話や詐欺に利用される可能性も考える必要があります。
特に電話番号だけでなく、氏名、住所、生年月日、家族構成、勤務先などを組み合わせて伝えることは避けるべきです。警察庁も特殊詐欺などに関連して個人情報を守るための注意喚起を行っています。
詐欺師をからかうために会話を続けるのもおすすめできない
偶然、不審な電話を受けた場合でも、「だまされたふりをして最後にネタばらししよう」と長時間会話することは推奨できません。警察庁が特殊詐欺対策で強調している基本は、犯人と話をしないことです。
理由の一つは、会話そのものから情報を与えてしまう可能性があるためです。例えば「息子はいない」「○○銀行は使っていない」「昼間は一人で家にいる」といった何気ない返答も、自分や家族についての情報になります。
また、相手が犯罪者である以上、どのような反応をするかは予測できません。単なるいたずら電話とは性質が違うため、相手を怒らせたり挑発したりする必要はありません。
「だまされたふり作戦」は個人で勝手に行うものではない
特殊詐欺について調べていると、「だまされたふり作戦」という言葉を目にすることがあります。これは、不審電話を受けた人が警察へ相談した後、捜査上必要な場合に警察の指示を受けながら対応するものです。
つまり、「面白そうだから犯人との会話を続ける」という個人的な遊びとは別物です。犯人が現金やキャッシュカードを受け取りに来るタイプでは、実際に人物が自宅周辺へ現れる可能性もあります。
不審電話を受けて詐欺だと気付いた場合、独自に犯人を追跡したり会う約束をしたりせず、警察へ相談するほうが安全です。
実際に詐欺電話がかかってきたらどうする?
警察庁は、電話でお金の話が出た場合には一度電話を切り、家族などへ相談するよう案内しています。また、警察官を名乗る電話の場合でも、相手から教えられた番号ではなく、自分で調べた最寄りの警察署などの正規の電話番号へかけ直して確認することが重要です。
暗証番号、口座情報、本人確認に使える個人情報なども伝えないようにします。「確認のため」「捜査のため」と言われても、その場で相手の指示に従う必要はありません。
判断に迷う場合には、警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」が案内されています。[参照:警察庁 SOS47特殊詐欺対策ページ]
知らない番号には最初から出ない方法が有効
詐欺電話への対策として非常にシンプルなのが、知らない番号からの電話へ安易に出ないことです。警察庁も固定電話の番号表示サービスや非通知拒否サービスなどを特殊詐欺対策として案内しています。
留守番電話を利用して相手を確認してから必要な電話だけ折り返す方法もあります。特に固定電話を利用する高齢者がいる家庭では、家族と「知らない番号には出ない」「電話でお金の話が出たら必ず家族へ確認する」といったルールを決めておくと効果的です。
また、海外との固定電話による通話が不要な人について、警察庁は国際電話の利用休止も対策として紹介しています。詐欺電話を見破る能力に頼るより、そもそも犯人と会話しにくい環境を作る考え方です。
詐欺電話の実例を聞きたいなら警察庁が音声を公開している
「実際のオレオレ詐欺はどんな話し方なのか」「自分なら見破れるのか」と興味を持つこと自体は、防犯知識を身につけるきっかけになります。ただし、そのために本物の犯罪者から電話が来るよう仕向ける必要はありません。
警察庁のSOS47では、オレオレ詐欺のページで犯行グループによる実際の電話音声を紹介しています。[参照:警察庁 オレオレ詐欺・実際の音声]
実際の手口に興味がある場合は、このような公的機関が公開している防犯資料を利用するほうが安全です。家族と一緒に聞き、「この言葉が出たら一度切る」と確認しておけば、防犯にも役立ちます。
詐欺電話が来ないことは「困ること」ではない
特殊詐欺では、犯人との接触そのものを減らすことが重要です。そのため、一度もオレオレ詐欺らしい電話が来ていないのであれば、防犯上は望ましい状態と考えられます。
「一度くらい犯人を言い負かしてみたい」と思っていても、相手は素性の分からない犯罪者です。自分から接点を作ることで、電話番号や個人情報を危険にさらす必要はありません。
もし偶然かかってきた場合にも、最後まで話を聞いてから「残念でした」と挑発するより、早い段階で電話を切るほうが安全です。必要に応じて着信番号や日時などを記録し、警察へ相談しましょう。
まとめ:オレオレ詐欺は現在も存在するが、犯人との接触は避けるのが基本
オレオレ詐欺を含む特殊詐欺は現在も発生しています。2026年5月末の警察庁暫定値でも、オレオレ詐欺は1,472件、被害額54.6億円が認知されており、決して過去の犯罪ではありません。
さらに現在は、親族へのなりすましだけでなく、警察官を装ったニセ警察詐欺や国際電話を利用した手口なども問題になっています。詐欺の名称を覚えるだけではなく、「電話で突然お金や個人情報を要求されたら一度切る」という対応を習慣にすることが重要です。
詐欺電話を意図的に呼び込む方法を試したり、犯人をからかう目的で会話を長引かせたりすることは避けましょう。実際の詐欺電話に興味がある場合は、警察庁が公開している実際の音声や防犯資料を利用すれば、安全に手口を知ることができます。
不審な電話を受けた場合には相手の要求に応じず、一度電話を切って家族や警察へ相談します。警察相談専用電話は「#9110」、消費者トラブルについては消費者ホットライン「188」が利用できます。特殊詐欺では「犯人を見破って遊ぶ」ことよりも、「犯人と話さない環境を作る」ことが最も基本的な対策です。


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