不法滞在・不法残留とは?「不正規滞在」との違い、オーバーステイの法的扱いと事情による違いを解説

国際情勢

外国人の在留問題については、「不法滞在」「不法残留」「オーバーステイ」「不正規滞在」など複数の言葉が使われます。これらは似ているように見えますが、法律上の位置付けや使われる文脈は必ずしも同じではありません。

特に注意したいのは、在留期限を過ぎたという結果と、その人がなぜその状態になったのかという事情は分けて考える必要があることです。在留期限を過ぎれば法的な問題が生じますが、故意に長期間滞在していたケースと、期限管理上のミスなどが生じたケースを社会的評価まで含めて完全に同一視するのも正確ではありません。

この記事では、日本の出入国在留管理制度を前提として、不法滞在・不法残留の意味、軽微な違反といえるのか、「不正規滞在」という表現との関係、本人と行政の責任、出国命令制度などを整理します。

「不法滞在」と「不法残留」は厳密には同じ意味ではない

まず用語を整理しておく必要があります。出入国在留管理庁の資料では、「不法滞在者」について、不法入国者や在留期間を経過して滞在する不法残留者などを含む概念として扱っています。[参照:出入国在留管理庁「退去強制手続」]

例えば、正規の手続きを経て日本へ入国し、適法な在留資格で生活していた人でも、在留期間の更新などをしないまま期限を過ぎれば「不法残留」の問題が生じます。一方、そもそも正規の上陸手続きを経ずに入国したケースなどは事情が異なります。

つまり、「不法滞在者」という一語だけから、入国した時点から違法だったのか、それとも正規に入国した後で在留期限を過ぎたのかまでは判断できません。議論するときには、どの状態を指しているのかを区別することが重要です。

在留期限を過ぎた状態は「単なるうっかり」で法的に無かったことにはならない

日本で一定の在留資格を持つ外国人が、現在の資格のまま在留期間を超えて引き続き滞在したい場合には、原則として在留期間更新許可申請が必要です。出入国在留管理庁は、更新申請について在留期間満了日前に行うものと案内しています。[参照:出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」]

したがって、「期限を忘れていただけだから、法的には問題がない」という仕組みではありません。期限を過ぎて不法残留となれば、入管法上の手続の対象になり得ます。

一方で、「法令違反に該当するか」と「どのような事情があったのか」は別の問題です。期限を意図的に無視して長期間滞在した場合と、何らかの事情で期限管理に問題が生じた場合では、事実関係が異なります。「ミスなら合法」という意味ではありませんが、背景事情まで無意味になるわけでもありません。

不法残留は軽微な違反なのか

不法残留について「駐車違反程度の軽いもの」と考えるのも、「事情を問わず極めて重大な犯罪として同一に扱われる」と考えるのも、制度を正確に表しているとはいえません。

出入国在留管理庁によれば、不法入国、不法上陸、不法残留など一定の退去強制事由に該当する外国人については、違反調査、違反審査、口頭審理などの手続が設けられています。事実関係だけでなく、外国人の情状をくみ取るための手続も行うと説明されています。[参照:出入国在留管理庁「退去強制手続」]

つまり、不法残留は法律上無視できる状態ではありません。しかし、その後の手続が全員について機械的にまったく同じになるわけでもなく、法律上用意された制度に沿って個々の状況が扱われます。

自主的に出頭する人のための「出国命令制度」もある

不法残留者に関して理解しておきたい制度の一つが「出国命令制度」です。一定の要件を満たす不法残留者について、通常の退去強制手続とは異なる簡易な手続によって出国できる制度です。[参照:出入国在留管理庁「出国命令制度について」]

さらに2024年6月10日施行の改正では、自発的な出国を促す観点から、出国命令制度の対象となり得る範囲について制度変更も行われています。もちろん、不法残留者なら無条件で利用できる制度ではなく、法律上の要件をすべて満たす必要があります。[参照:出入国在留管理庁「出国命令」]

この制度が存在することからも、日本の制度は「不法残留であれば背景やその後の行動を一切区別しない」という構造ではありません。一方で、出国命令制度があるから不法残留そのものが適法になるわけでもありません。

退去強制と出国命令では再入国への影響も異なる

出入国在留管理庁によれば、不法残留などによって退去強制手続がとられ強制送還された場合、原則として一定期間日本へ入国できなくなります。同庁の案内では、強制送還後5年間、事情によっては10年間となる場合があると説明されています。[参照:出国命令制度について]

これに対して、一定の要件を満たして出国命令制度によって出国した場合には、通常の退去強制とは異なる扱いがあります。そのため、自分が不法残留状態にあると気付いた場合に、放置を続けることは適切ではありません。

実際の個別案件については、滞在期間、過去の退去強制歴、犯罪歴、出頭の時期などさまざまな事情が関係するため、一般論だけで結論を出すべきではありません。

「不正規滞在」という言葉に変えれば合法になるわけではない

「不法滞在」と「不正規滞在」をめぐっては、法律論だけでなく言葉遣いについて議論されることがあります。しかし、呼び方を変えることと、在留資格・在留期間についての法的状態が変わることは別問題です。

「不正規滞在」という表現を使ったからといって、入管法上の不法残留に該当する状態が適法になるわけではありません。反対に、「不法滞在者」という言葉を使っただけで、その人の入国経緯や不法残留に至った事情、現在行われている手続まで分かるわけでもありません。

法的な問題を検討するときには、「どの呼称が好ましいか」という言語上・政策上の議論と、「入管法上どの状態に該当するのか」という法律上の判断を切り分ける必要があります。

「不正規滞在」という言葉は擁護を意味するのか

必ずしもそうとは限りません。「不正規」という言葉を選択する人の中には、人物そのものを「違法」と形容するのではなく、その人の在留状態が正規ではないことを表現したいという考え方をする人もいます。

一方、日本の出入国在留管理庁は公式資料や制度案内で「不法滞在者」「不法残留者」という用語を現在も使用しています。例えば、同庁の退去強制手続のページや不法滞在者対策に関する公表資料で確認できます。[参照:出入国在留管理庁]

したがって「不法滞在と言う人は厳罰派」「不正規滞在と言う人は違法行為を擁護している」と言葉だけから相手の立場を決めつけるのは適切ではありません。どの法的状態について、どのような文脈で話しているのかを見る必要があります。

行政のミスや怠慢があれば本人の不法残留になるのか

この点も「行政が悪いか、外国人本人が悪いか」という二択では整理できません。通常、引き続き日本に在留するために必要な在留期間更新許可申請は、本人などが期限内に行う必要があります。

ただし、期限前に適法な更新申請を行っているにもかかわらず審査が在留期限までに終了しない場合には、一定の条件の下で従来の在留資格により引き続き在留できる「特例期間」の仕組みがあります。したがって、カードなどに記載された当初の在留期限を過ぎて日本にいる人が、必ず不法残留者であるとは限りません。

また、行政側の誤案内や手続上の特殊事情が問題になっているケースなら、その具体的事実を確認しなければ責任関係は判断できません。「期限が切れているように見える」という一点だけから行政の責任または本人の責任を断定することは避けるべきです。

具体例で考えると違いが分かりやすい

例えば、在留期間が9月30日までの人が、何の更新手続もせず、その後も日本に滞在し続けたとします。この場合は、単に「行政から更新のお知らせが来なかった」というだけで自動的に在留資格が延長されるわけではありません。

一方、同じ9月30日が期限でも、その前に適法な在留期間更新許可申請を行い、10月になっても審査結果が出ていないケースでは話が違います。一定の条件の下で特例期間の対象となり、直ちに不法残留になるわけではありません。

さらに、本人が不法残留になったことに気付き、自発的に入管へ出頭して帰国を希望した場合には、要件を満たせば出国命令制度が適用される可能性があります。このように、外から見て「在留期限を過ぎて日本にいる」という情報だけでは法的状態を正確に判断できません。

不法残留と不法就労も別の問題

もう一つ混同されやすいのが、不法残留と不法就労です。在留期限を超えて滞在する問題と、法律上認められていない就労をする問題は区別して考える必要があります。

出入国在留管理庁、警察庁、法務省、厚生労働省は、不法就労外国人をめぐる問題について連携して対策を実施しています。[参照:出入国在留管理庁「不法就労等外国人対策の推進について」]

したがって「不法滞在している」「許可されていない仕事をしている」「在留資格とは異なる活動をしている」といった状態を、すべて一つの概念として扱わないことも重要です。

現在の日本は不法残留を政策上も対策対象としている

不法残留が行政上ほとんど問題視されていない、という理解も現在の政策とは一致しません。出入国在留管理庁は2026年にも不法滞在者対策を公表しており、2026年1月1日時点の不法残留者を約6万8千人として、その減少に向けた施策を進めています。[参照:出入国在留管理庁「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」]

つまり、不法残留は「行政上ほぼ問題にならない軽微なミス」として制度設計されているわけではありません。

その一方で、出国命令制度や個別事情を確認する手続なども存在します。取締りの対象であることと、すべての不法残留者について事情を無視して同一に扱うことは同義ではありません。

まとめ:違法状態かどうかと、そこに至った事情は分けて考える

日本の制度では、許可された在留期間を超えて適法な根拠なく滞在すれば、不法残留の問題が生じます。「うっかり忘れた」という理由だけで当然に合法化される制度ではなく、退去強制手続などにつながり得るため、単なる無意味な形式違反として扱うのは正確ではありません。

一方で、不法滞在には不法入国と不法残留など異なる類型があり、不法残留についても期間や経緯、自主的な出頭など事情はさまざまです。一定の要件を満たした人には出国命令制度も用意されています。

また、「不正規滞在」という呼称を使っても法的状態そのものが変化するわけではありません。逆に「不法滞在」という言葉だけから、その人が故意に制度を悪用したと断定することもできません。

最も重要なのは、呼び方だけで合法・違法や責任の重さを決めるのではなく、入管法上の状態と個別の経緯を確認することです。実際に本人や家族の在留期限が過ぎている可能性がある場合には、インターネット上の一般論だけで判断せず、速やかに地方出入国在留管理官署や外国人在留総合インフォメーションセンター、必要に応じて入管業務を扱う弁護士などへ相談することが重要です。

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