マイナンバーカードはあるのに「ユーナンバーカード」がない理由|My Numberの「マイ」は何を意味する?

マイナンバー

日本の行政サービスで広く使われている「マイナンバーカード」。英語の「my」が「私の」という意味なら、「your(あなたの)」を使った「ユーナンバーカード」もありそうに思えます。しかし、マイナンバーカードの「マイ」は、カードを発行する側から見た所有者を表しているわけではありません。

結論につながるポイントは、「マイナンバー」が制度の名称として採用された呼び方であり、「マイ」と「ユー」を人によって使い分ける仕組みではないということです。「マイナンバー」という名称の成り立ちを理解すると、なぜ「ユーナンバーカード」が存在しないのかも分かりやすくなります。

そもそもマイナンバーカードとは?

マイナンバーカードは、マイナンバー(個人番号)が記載された顔写真付きのICカードです。デジタル庁によると、本人確認のための身分証明書として利用できるほか、ICチップに搭載された電子証明書を利用してオンラインで行政手続きを行うことなどができます。[参照]

ここで重要なのが、「マイナンバー」と「マイナンバーカード」は厳密には同じものではない点です。マイナンバーは日本国内の住民票を有する人に指定される12桁の番号で、マイナンバーカードはその番号などが記載されたカードです。

つまり「マイナンバーカード」という名前は、一般的な英語表現として「私の番号カード」と文章を作っているのではなく、「マイナンバー」という名称を冠したカードと理解すると分かりやすくなります。

「マイナンバー」は制度の愛称として選ばれた

「マイナンバー」は、番号制度について国民に親しみを持ってもらうことなどを目的として選ばれた愛称です。内閣官房が2011年に公表した資料では、「社会保障・税番号制度」の愛称を公募し、807件の応募から「マイナンバー」が選定されたことが説明されています。[参照]

そのため、「マイ」は会話の話者によって変化する代名詞として運用されているわけではありません。「マイナンバー」という一まとまりの名称として社会で使われています。

例えば商品名やサービス名に「マイ○○」と付いていても、他人がその商品について話した瞬間に「ユア○○」へ名称が変化するわけではありません。それと似た考え方です。

英語のmyとyourなら「ユーナンバー」ではなく「ユアナンバー」

もう一つ面白いポイントがあります。仮に「マイナンバー」を英語の文法だけで考えて対になる表現を作る場合、「my number」に対応するのは「your number」です。

そのため、英語として直訳するなら「ユーナンバー(you number)」ではなく「ユアナンバー(your number)」のほうが自然です。「you」は「あなた」という代名詞で、「your」は「あなたの」を意味する所有格だからです。

英語 日本語の意味
my 私の my number=私の番号
your あなたの your number=あなたの番号
you あなた・あなたたち you are~=あなたは~

したがって言葉遊びとして考えても、「マイナンバー」に対して「ユーナンバー」という組み合わせは、英語の文法上では完全な対にはなりません。

自分から見れば全員が「マイナンバー」を持っている

名称の感覚を理解するには、制度を利用する一人ひとりの視点から考えると分かりやすくなります。Aさんに指定された番号は、Aさんにとって「自分の番号」です。Bさんに指定された番号も、Bさん本人から見れば「自分の番号」です。

つまり制度利用者それぞれが自分自身を基準にすれば、全員にとって「マイナンバー」になります。行政側がAさんを「マイ」、Bさんを「ユー」と分類しているわけではありません。

例えば「マイホーム」という言葉も似ています。他人の家を見たときに、その住宅の正式名称が「ユアホーム」へ変わるわけではありません。「自分の家」という概念を表す言葉としてマイホームが定着しています。

正式には「個人番号」という言葉も使われる

「マイナンバー」は非常によく知られた名称ですが、法令上では「個人番号」という用語が使われています。デジタル庁も公式サイトで「マイナンバー(個人番号)」と表記しています。[参照]

この「個人番号」という言葉で考えると、マイ・ユーの疑問はほぼなくなります。Aさんにも個人番号があり、Bさんにも個人番号があるというだけだからです。

制度について正確に説明する場面では、「あなたのマイナンバー」という日本語も普通に成立します。この場合の「マイ」は話者を指す代名詞ではなく、制度名の一部になっていると考えられます。

「マイナンバー」と呼ぶメリットは分かりやすさにある

行政制度には法律上の正式な用語が多数あります。しかし、日常生活で利用する制度については、一般の人が覚えやすい名称が付けられることがあります。

「社会保障・税番号制度」「個人番号」といった表現だけより、「マイナンバー」という短い名称のほうが覚えやすいと感じる人もいるでしょう。実際、愛称選定時には「親しみやすさ」「分かりやすさ」などの観点が示されていました。[参照]

その愛称が普及し、「マイナンバーカード」「マイナポータル」といった関連サービスの名称にも「マイ」が使われています。このため現在では「マイナンバー」が制度を識別する固有の名称として強く定着しています。

「ユーナンバーカード」が作られないのは制度上必要ないから

もし「マイナンバーカード」と「ユーナンバーカード」という2種類のカードを作ったとしても、誰から見た呼び方なのかという問題が生じます。自分のカードは「マイ」で、他人のカードは「ユア」とすると、同じカードなのに見る人によって名称が変わってしまいます。

行政制度の名称としては、利用者によって呼び名が変わる必要はありません。「マイナンバーカード」という共通名称を一つ決めておけば、本人のカードについても他人のカードについても同じ名称で説明できます。

そのため、「マイナンバーカードが存在するなら対になるユーナンバーカードも必要」という関係にはなっていません。「マイナンバー」は制度の名称として理解するのがポイントです。

まとめ|「マイ」は人を区別するための言葉ではない

マイナンバーの「マイ」は、行政が「私」を意味して使っているわけではありません。「マイナンバー」という名称そのものが、社会保障・税番号制度の愛称として選ばれ、現在の制度名称として定着しています。

そのため、一人ひとりに「マイ」と「ユー」の2種類のカードが存在する必要はありません。また英語の文法だけで対になる言葉を考える場合でも、myに対応する所有格はyouではなくyourなので、「ユーナンバー」より「ユアナンバー」に相当します。

マイナンバー=「マイ」という種類の番号ではなく、個人番号制度について定着した名称と考えると、「なぜユーナンバーカードがないのか」という疑問をすっきり整理できます。

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