近年の富山県・石川県では、地震、大雨、豪雪など自然災害のニュースが相次いでいます。とりわけ2024年1月1日の令和6年能登半島地震と同年9月の奥能登豪雨が短期間に発生したことで、「北陸は昔から災害が多い地域なのだろうか」と感じる人もいるでしょう。
しかし、富山県と石川県をひとまとめにして「昔から災害が多い県」と評価するのは適切ではありません。両県では地形や地質が異なり、地震、豪雨、土砂災害、雪害など、災害の種類によってリスクも大きく異なるためです。
特に近年の石川県では能登地方の一連の地震活動が大きな影響を与えています。一方、富山県では歴史的に大きな地震の発生頻度が比較的低かったものの、豪雨や河川氾濫、土砂災害、豪雪など別の自然災害への備えが必要です。ここでは公的機関の資料をもとに、富山・石川の災害史と近年「災害が多い」と感じやすくなった背景を整理します。
- 富山県と石川県を一括して「災害県」と考えるのは難しい
- 石川県では近年、能登地方の地震活動が非常に目立っている
- 2024年の能登半島地震は非常に規模の大きな災害だった
- 石川県では2007年にも能登半島地震が発生している
- 富山県は石川県と地震の状況がかなり異なる
- ただし富山県にも活断層による地震リスクがある
- 富山県は地震だけでなく豪雨・河川災害にも注意が必要
- 2024年の地震では富山県でも約2万2800棟の住宅被害
- 北陸では昔から雪害も重要な自然災害だった
- 「最近特に災害が多い」と感じるのには理由がある
- 地震の直後に豪雨が来ると被害が拡大しやすい
- 日本では「災害が少なかった地域=今後も安全」とは限らない
- 富山と石川の災害リスクを比べるときのポイント
- まとめ:昔から常に災害が多かったというより、近年の能登で大規模災害が集中している
富山県と石川県を一括して「災害県」と考えるのは難しい
自然災害には地震、津波、洪水、土砂災害、台風、高潮、豪雪などがあります。そのため「災害が多い県」という評価は、何を基準にするかによって大きく変わります。
例えば地震が比較的少なくても、大雨による河川氾濫や土砂災害が起こる地域があります。反対に台風の直撃は少なくても、大規模な活断層地震が発生する可能性のある地域もあります。単純な災害発生回数だけで安全性を比較することはできません。
富山県と石川県も同様です。隣接する北陸2県ですが、能登半島を抱える石川県と、富山湾を囲むような地形を持つ富山県では災害特性が異なります。
石川県では近年、能登地方の地震活動が非常に目立っている
近年「石川県は地震が多い」という印象が強くなった最大の理由の一つが、能登地方で続いてきた地震活動です。気象庁によれば、石川県能登地方では2020年12月から地震活動が活発になりました。
その後、2022年6月にマグニチュード5.4・最大震度6弱、2023年5月にマグニチュード6.5・最大震度6強の地震が発生しました。そして2024年1月1日にはマグニチュード7.6、最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しています。さらに2024年6月にはマグニチュード6.0・最大震度5強、同年11月にはマグニチュード6.6・最大震度5弱の地震も発生しました。[参照:気象庁 令和6年能登半島地震等の関連情報]
つまり、少なくとも近年の能登地方については「たまたま大きな地震が1回発生した」という状況ではなく、数年間にわたる活発な地震活動の中で大規模地震が発生したと理解する必要があります。
2024年の能登半島地震は非常に規模の大きな災害だった
令和6年能登半島地震は2024年1月1日16時10分、石川県能登地方の深さ16kmを震源として発生しました。マグニチュードは7.6、最大震度は7でした。強い揺れだけでなく、津波、土砂崩れ、火災、地盤変動など複数の現象が重なりました。[参照:気象庁 気象業務はいま2024]
気象庁の「日本付近で発生した主な被害地震」の集計では、2026年3月31日現在、同地震による死者は720人、行方不明者2人、負傷者1,407人、住家全壊6,536棟、半壊23,707棟、一部破損135,545棟などとされています。[参照:気象庁 日本付近で発生した主な被害地震]
これほど大規模な災害が発生すると、全国ニュースで北陸が報じられる機会も一気に増えます。そのため実際の災害リスクだけでなく、報道への接触頻度によっても「最近の石川県は災害が非常に多い」という印象が強くなります。
石川県では2007年にも能登半島地震が発生している
能登半島で大きな被害をもたらした地震は2024年が初めてではありません。2007年3月25日には能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の「平成19年(2007年)能登半島地震」が発生しています。
さらに歴史をさかのぼれば、能登半島周辺には過去の地震記録があります。したがって「これまで地震とは無縁だった土地が、2020年代になって突然地震地域になった」と考えるのも正確ではありません。
ただし、2020年末から始まった一連の地震活動が非常に目立ったことも事実です。2022年、2023年、2024年と強い地震が相次いだため、近年になって石川県の地震リスクを強く意識する人が増えたと考えられます。
富山県は石川県と地震の状況がかなり異なる
富山県については、気象庁富山地方気象台が1919年以降に県内で震度5弱以上を観測した地震をまとめています。それによると、該当する地震は1930年の石川県西方沖の地震、2007年の能登半島地震、2024年の令和6年能登半島地震です。[参照:富山地方気象台 過去の地震・津波]
2024年の能登半島地震では、富山県でも最大震度5強を観測しました。富山県の資料では、これは県内で観測史上最大の震度だったとされています。
この記録を見る限り、少なくとも近代的な震度観測記録において、富山県が頻繁に震度5~6クラスの強震に襲われ続けてきた地域とは言いにくいでしょう。近年の能登地方の地震によって隣県の富山も強く揺れたため、石川と富山が同時に「地震の多い地域」として印象付けられやすくなっています。
ただし富山県にも活断層による地震リスクがある
過去に大地震が少ないことと、将来も大地震が起こらないことは別問題です。富山県とその周辺には活断層が存在するため、過去の観測回数だけを根拠に「地震に強い県」と判断することはできません。
地震には発生間隔が非常に長いものがあります。人間にとって100年は長期間ですが、活断層の活動を考える時間尺度では十分に長いとは限りません。
そのため住宅選びや防災対策では、県単位の「地震が多い・少ない」という評判より、地震ハザードマップ、活断層、地盤、液状化、津波浸水想定などを住所単位で確認することが重要です。
富山県は地震だけでなく豪雨・河川災害にも注意が必要
富山県で考えるべき自然災害は地震だけではありません。県の資料によると、2023年6月28日および7月12日の豪雨では、河川氾濫や斜面崩壊などが発生しました。
特に7月12日の梅雨前線豪雨では、床上浸水79戸、床下浸水734戸の住宅被害が記録されています。また富山県で初めて線状降水帯が観測され、ダムの緊急放流も実施されました。
富山県には急峻な山地から平野部へ流れる河川が多数あります。そのため短時間に大量の雨が降った場合、河川増水や土砂災害などへの警戒が必要になります。
2024年の地震では富山県でも約2万2800棟の住宅被害
震源が石川県能登地方だった令和6年能登半島地震では、隣接する富山県も大きな被害を受けました。
富山県がまとめた近年の災害資料では、同地震による県内の住宅被害は約2万2800棟、公共土木施設の被害は413件とされています。道路崩落や河川堤防の損傷なども発生しました。
震源地が県外であっても、県境を越えて被害が発生する典型例です。このため「富山県内を震源とする大地震が少ない」という情報だけでは、富山県の地震リスク全体を判断できません。
北陸では昔から雪害も重要な自然災害だった
富山県・石川県を含む北陸地方では、冬季の大雪も重要な災害リスクです。積雪そのものだけでなく、道路交通の麻痺、鉄道運休、倒木、停電、屋根の雪下ろし中の事故などにつながります。
石川県の災害記録にも大雪による被害が複数記録されており、2022年12月にも雪害への対応が行われています。[参照:石川県 県内の災害による被害状況]
全国ニュースでは大地震や大規模水害ほど注目されないことがありますが、地域住民の日常生活という観点では、雪は北陸で古くから向き合ってきた自然災害の一つです。
「最近特に災害が多い」と感じるのには理由がある
近年の北陸が特に災害続きに見えることには、実際に大きな災害が短期間に重なったという明確な背景があります。
石川県では2024年1月に能登半島地震が発生し、同年9月には奥能登豪雨によって、地震から復旧途中だった地域が再び大きな被害を受けました。石川県は現在も両災害を一体的に扱いながら復旧・復興を進めています。[参照:石川県 令和6年能登半島地震 復旧・復興のあゆみ]
つまり「最近だけそう見える」という印象論だけではなく、能登地方では実際に地震と豪雨という大規模災害が短期間に重なりました。一方、それをそのまま「石川県は昔から全国有数の災害県だった」という結論へ結び付けることも適切ではありません。
地震の直後に豪雨が来ると被害が拡大しやすい
能登で重要なのは、それぞれの災害を独立して考えられない点です。大地震によって地盤が緩んだり、道路や斜面、河川施設などが損傷したりした状態では、その後の大雨による危険性が高まることがあります。
また住宅や道路などが復旧途中で次の災害が発生すると、避難や復旧工事そのものにも影響します。2024年の能登では、地震被災地が同じ年に豪雨災害にも見舞われたことが大きな問題となりました。
このような「複合災害」は、単純な年間災害件数だけでは表現しにくいリスクです。一つの地域で短期間に災害が続くと、社会的な影響は個々の災害を単純に足したもの以上に大きくなる場合があります。
日本では「災害が少なかった地域=今後も安全」とは限らない
自然災害について特に注意したいのが、過去数十年間の経験だけから将来を判断することです。大地震のように発生間隔の長い現象では、一世代の生活経験だけではリスクを把握できません。
例えば「自分が住んでから大きな地震を経験していない」「親の世代も大地震を知らない」という経験則は、その土地に地震リスクがないことを意味しません。
豪雨についても同様で、過去に浸水したことがない住宅でも想定を上回る降雨によって被災する可能性があります。そのため自治体が公開する洪水、土砂災害、津波などのハザードマップを確認することが重要です。
富山と石川の災害リスクを比べるときのポイント
両県の特徴を大まかに整理すると、次のようになります。ただし県内でも地域差が非常に大きいため、あくまで一般的な整理です。
| 災害 | 富山県 | 石川県 |
|---|---|---|
| 地震 | 近代観測では震度5弱以上の回数は多くないが、活断層や周辺地域の地震への備えが必要 | 特に能登地方で2020年末以降、地震活動が活発化 |
| 津波 | 富山湾沿岸では想定があり、2024年には津波を観測 | 日本海沿岸・能登半島で津波リスクがある |
| 豪雨・洪水 | 河川氾濫や浸水、土砂災害への注意が必要 | 河川・土砂災害への注意が必要で、2024年には奥能登豪雨が発生 |
| 豪雪 | 地域によって大雪・雪害への備えが重要 | 地域によって大雪・雪害への備えが重要 |
| 土砂災害 | 山間部などでリスクがある | 能登を含む山地・丘陵地などでリスクがある |
同じ県でも沿岸部、平野部、山間部では危険な災害が変わります。「富山県だから安全」「石川県だから危険」という県単位の判断ではなく、自宅や勤務先周辺の条件を見る必要があります。
まとめ:昔から常に災害が多かったというより、近年の能登で大規模災害が集中している
富山県と石川県について、単純に「昔から災害県だった」と表現するのは適切ではありません。北陸では昔から豪雪、洪水、土砂災害、地震などさまざまな自然災害が発生してきましたが、その種類や頻度は地域によって異なります。
特に現在の印象へ大きく影響しているのが石川県能登地方です。気象庁によれば能登では2020年12月から地震活動が活発化し、2022年の最大震度6弱、2023年の最大震度6強を経て、2024年1月には最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しました。さらに同年には奥能登豪雨も発生しています。
一方の富山県では、気象庁の1919年以降の記録で県内震度5弱以上となった地震は限られています。ただし2024年の能登半島地震では県内観測史上最大となる震度5強を記録し、多数の住宅や公共施設が被害を受けました。また豪雨、洪水、土砂災害、豪雪といった地震以外のリスクもあります。
したがって、「富山・石川は昔から特別に災害ばかりの地域だった」というより、近年は能登地方の活発な地震活動と2024年の地震・豪雨が集中したことで、北陸の災害が非常に目立つ時期になった、と捉えるのが実態に近いでしょう。
そして過去の災害が少なかった地域でも将来の安全が保証されるわけではありません。居住地の安全性を判断するときは県全体のイメージではなく、自治体のハザードマップや気象庁など公的機関の資料を使い、地震・津波・洪水・土砂災害などを個別に確認することが大切です。


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