バス通りの路上駐車はどこまで問題になる?一方通行で長時間車を離れた場合の違法性・責任を解説

事件、事故

都市部の狭い道路では、1台の路上駐車が原因で路線バスやトラックが通れなくなることがあります。特に一方通行の道路では迂回や追い越しが難しく、わずかな駐車でも公共交通や周辺交通へ大きな影響を及ぼす場合があります。

2026年8月には、東京都渋谷区の井の頭通りで路上駐車された乗用車によって京王バスが通行できなくなるトラブルが報道されました。SNSでは「40分以上」「1時間」といった情報も流れましたが、報道機関が京王バスへ確認したところ、実際にバスが運行できなかった時間は約23分だったとされています。[参照:弁護士JPニュース]

路上駐車について考える際には、「何分なら許されるのか」だけを見るのではなく、駐車場所、標識、道路幅、車両を離れた状況、ほかの車両の通行を妨げたかなどを総合的に確認する必要があります。ここでは道路交通法のルールと、バスを実際に止めてしまった場合に考えられる責任を整理します。

まず知っておきたい「停車」と「駐車」の違い

道路交通法上の「駐車」は、単純に「長時間止めた場合」だけを意味するものではありません。客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障などの理由で継続的に停止する場合のほか、運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態も駐車に含まれます。

したがって「数分しか離れていないから停車」という判断が常に成立するわけではありません。運転者が車から離れ、呼ばれてもすぐ移動できない状態なら、時間が短くても駐車として扱われる可能性があります。

反対に、人の乗り降りや一定条件での短時間の貨物積卸しなどは停車として扱われる場合があります。路上で車を止める際には、時間だけではなく停止した目的と、運転者が直ちに車を動かせる状態なのかが重要になります。

一方通行なら路上駐車してもよいわけではない

一方通行は、指定された方向にだけ車両を通行させる交通規制です。一方通行だからといって、その道路上で自由に駐車できるわけではありません。

道路標識などによって駐車禁止となっている場所では、原則として駐車できません。また道路交通法第45条第2項では、所定の方法で駐車した結果、車両の右側の道路上に3.5メートル以上の余地がなくなる場所では原則として駐車できないと定められています。[参照:e-Gov法令検索 道路交通法]

この3.5メートルという基準は非常に重要です。普通乗用車なら通れそうに見えても、路線バスや大型車には十分な幅が残されていない場合があります。「ほかの乗用車が通れるから問題ない」と自己判断するのは危険です。

道路の左側に寄せれば必ず適法になるわけでもない

一般的な道路では、駐停車するときには道路の左側端に沿うことが基本となります。しかし、左側へきちんと寄せていたとしても、それだけで駐車が合法になるわけではありません。

例えば駐車禁止標識がある場所、道路交通法上の駐停車禁止場所、駐車によって必要な通行余地を確保できなくなる場所などでは、左側へ寄せていても問題になります。

つまり路上駐車では、「端に寄せたか」と「そもそもそこへ駐車してよいか」は別の問題として考える必要があります。

狭いバス通りへの長時間駐車は特に影響が大きい

路線バスが日常的に走る狭い道路へ駐車するときには、一般の乗用車だけでなく、バスが安全に通過できるかを意識する必要があります。バスは車体が長く、曲がり角では内輪差や車体後部の振り出しも考慮しなければなりません。

例えば乗用車なら横を抜けられる程度の隙間があったとしても、バスでは通過できないことがあります。無理に通過すれば、駐車車両への接触だけでなく、反対側の建物、標識、歩行者などとの接触事故につながる可能性もあります。

さらに運転者が車から離れていると、バスの運転士が移動を求めることもできません。その結果、警察への通報や運転者の捜索が必要になり、1台の路上駐車が路線全体の遅延へ発展することがあります。

渋谷の事例では実際にバスが約23分動けなくなった

2026年8月3日に渋谷区の井の頭通りで発生した事例では、一般車の路上駐車によって京王バスが通行不能になったと報じられています。

京王バスへの取材によると、18時22分頃に路上駐車によってバスが通行できなくなり、18時23分頃に乗務員が営業所へ連絡しました。その後、営業所から警察へ通報し、18時28分頃には警察が現場へ到着。駐車車両の運転者が18時45分頃に戻り、バスは運行を再開したとされています。[参照:弁護士JPニュース]

この経緯から、バスそのものが通行できなかった時間は約23分です。「40分近くバスを止めた」という表現とは区別しておく必要があります。法律問題や事故・事件について論じる場合、SNS上の時間情報ではなく、当事者への取材などで確認された情報を基準にすることが重要です。

23分の遅延でも影響はそのバス1台だけとは限らない

路線バスはダイヤに基づいて運行されています。そのため1台が20分以上止まれば、乗車中の利用者だけでなく、先のバス停で待っている利用者にも影響が及びます。

さらに後続バスが追いつけば、同じ路線のバスが短い間隔で連続する、いわゆる団子運転につながることもあります。折り返し運行をする路線なら、その後の便まで遅れる可能性があります。

このため公共交通が通る道路での路上駐車は、「車1台を少し待たせるだけ」という問題ではありません。多数の利用者を運ぶ交通機関の運行を止める可能性があることを考える必要があります。

駐車禁止ではない場所ならバスを塞いでも問題ない?

「駐車禁止の標識がなければどこでも駐車できる」という理解も正確ではありません。道路交通法には、標識による規制とは別に駐停車禁止・駐車禁止となる場所や駐車方法についての規定があります。

特に道路交通法第45条第2項では、駐車した場合に車両の右側へ原則3.5メートル以上の余地が残らなくなる場所への駐車を禁止しています。例外として一定の貨物積卸しや傷病者の救護などが定められていますが、単に用事のため車を置いて離れるケースとは区別されます。[参照:e-Gov法令検索 道路交通法第45条]

警察庁が案内する駐車許可制度についても、交通に危険を生じさせたり著しく交通を阻害したりする時間帯ではないことなどが許可要件として示されています。道路交通では、単に車を置ける物理的スペースがあるかではなく、安全かつ円滑に交通できるかが重視されています。[参照:警察庁 駐車許可の概要]

路上駐車でバスを止めると損害賠償になる可能性もある

違法駐車によって路線バスの運行を妨げた場合、道路交通法上の問題だけで終わるとは限りません。状況によってはバス会社との間で民事上の損害賠償問題が発生する可能性があります。

民法第709条では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、それによって損害を生じさせた者は、その損害を賠償する責任を負うと定められています。

渋谷の事例について取材を受けた弁護士も、道路幅などから駐車すればバスが通れなくなることを一般的に予測できる場合には、バス会社から運転者や所有者への損害賠償請求が認められる可能性があるとの見解を示しています。ただし、実際に賠償が認められるか、いくらになるかは、違法性、過失、具体的な損害額、因果関係などによって判断されます。[参照:弁護士JPニュース]

「バスが遅れた時間×一定金額」で簡単に請求額が決まるわけではない

損害賠償という言葉から非常に高額な請求を想像することがありますが、民事上の賠償では原則として実際に発生した損害や因果関係が問題になります。

例えば、代替車両を手配する費用、追加の人件費、運休による営業上の損害などが発生したのであれば、それらが検討対象になる可能性があります。一方、「多数の乗客に迷惑を掛けた」という事情だけから自動的に巨額の賠償金が決まるわけではありません。

実際の渋谷の事例については、京王バスは報道機関の取材に対して、損害賠償請求等は検討していないと回答しています。したがって「請求できる可能性があること」と「実際に請求すること」も分けて考える必要があります。[参照:弁護士JPニュース]

故意にバスを妨害した場合は話がさらに変わる

単なる不注意による違法駐車と、バスを止めることを意図して車を置いた場合とでは、法的な評価が同じとは限りません。

報道では、バスの運行を妨害する可能性を認識しながら路上駐車した事情などがあれば、状況によって業務妨害罪など刑事上の問題が検討される可能性も指摘されています。ただし、犯罪が成立するかどうかは故意を含む具体的事情について捜査機関や裁判所が判断するものであり、単にバスが結果として止まっただけで直ちに業務妨害罪になるわけではありません。

特定の事例について外部から「故意だった」と断定することも避けるべきです。確認できる事実と、法律上あり得る評価を分けて考える必要があります。

「少しだけだから」という路上駐車が危険な理由

路上駐車をする側から見ると、「すぐ戻る」「少し買い物するだけ」「ほかの車は通れる」と考えてしまうことがあります。しかし運転者自身が道路上に立って大型車の通行可能幅を正確に判断することは簡単ではありません。

例えばバスがギリギリ通れそうに見えても、バスの運転士には安全に通過する責任があります。数センチ単位の余裕しかなければ、無理に進んで駐車車両へ接触するより停止して警察などへ対応を求める判断になることがあります。

そのため、「自分なら通れると思う」ことと「大型車が安全に通行できる」ことは別です。特にバス路線では大型車が通ることを前提として駐車場所を判断する必要があります。

バス通りではコインパーキングなど道路外の駐車場所を使うのが基本

都市部では目的地のすぐ前に車を置けるとは限りません。数分の用事であっても、道路状況によっては周辺の時間貸し駐車場などを利用する必要があります。

特に一方通行の狭い道路、路線バスの経路、交通量の多い道路では、1台の駐車によって交通が完全に止まる可能性があります。目的地から多少歩くことになっても、道路外の適切な駐車場所を利用するほうが安全です。

またハザードランプを点灯しても、駐車禁止場所への駐車が合法になるわけではありません。「ハザードを出したから大丈夫」という考え方は避ける必要があります。

まとめ:バス通りで車を離れる路上駐車は時間だけで判断できない

路上駐車の適法性は、「10分」「20分」「40分」といった時間だけでは決まりません。駐車禁止規制の有無、道路交通法上の禁止場所に該当するか、道路幅、駐車方法、運転者が直ちに車を動かせる状態だったかなどによって判断されます。

とりわけ道路交通法では、所定の方法で駐車した際に車両の右側へ原則3.5メートル以上の余地を確保できない場所への駐車が禁止されています。バス路線の狭い一方通行で車を放置すれば、乗用車は通れても大型の路線バスを通行不能にすることがあります。

2026年8月に渋谷で報じられた事例では、SNS上で「40分以上」などの情報もありましたが、京王バスへの取材で確認されたバスの通行不能時間は約23分でした。18時22分頃に通行不能となり、18時45分頃に駐車車両の運転者が戻って運行が再開されています。[参照:弁護士JPニュース]

一般論として、路線バスが走る狭い道路で、ほかの車両の通行に十分な余地を残せない状態で車を置き、運転者が長時間その場を離れることは避けるべき行為です。交通違反だけでなく、実際にバスなどの運行を妨げて損害を発生させれば民事責任が問題になる可能性もあります。路上に車を止める必要があるときは「自分の車を置けるか」ではなく、「その状態でも道路交通が安全かつ円滑に維持できるか」という視点で判断することが重要です。

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