労災保険の手続きで使用する「様式第6号」を見ると、記入欄の中に「年金証書の番号」という項目があります。20代など年金を受給した経験がない人の場合、「基礎年金番号なら分かるけれど、年金証書番号はどこにあるのか」と迷いやすい項目です。
ここで重要なのは、様式第6号にある「年金証書の番号」は、国民年金・厚生年金で使われる基礎年金番号を記入する欄ではないという点です。厚生労働省が公開している様式と記載例を確認すると、通常の転院に関する記載例では「年金証書の番号」の欄は空欄になっています。
この記事では、労災保険の様式第6号がどのような書類なのか、「年金証書の番号」が何を意味するのか、基礎年金番号との違い、年金を受給していない人がどう考えればよいのかを、公的資料をもとに整理します。
そもそも労災保険の「様式第6号」とは
労災保険の様式第6号は、正式には「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」という書類です。主に業務災害で労災指定医療機関を変更するときなどに使用します。
例えば、仕事中のケガでA病院に通院していたものの、引っ越しや専門的な治療などを理由にB病院へ転院する場合があります。このようなとき、変更後の労災指定医療機関等を経由して様式第6号を提出します。厚生労働省も、病院を変更するときには変更後の労災指定医療機関等に様式第6号を提出するよう案内しています。
なお、通勤災害の場合には同じ様式第6号ではなく「様式第16号の4」が使用されます。書類を準備するときは、業務災害なのか通勤災害なのかについても確認しておきましょう。[参照:厚生労働省「病院を変えたいのですが、どうしたらよいでしょうか」]
様式第6号には「年金証書の番号」という欄がある
様式第6号の上部を見ると、「①労働保険番号」に続いて「②年金証書の番号」という欄があります。年金証書番号は「管轄局」「種別」「西暦年」「番号」という形で記載する様式になっています。
そのため初めて書類を見ると、「年金証書番号を全員が記入しなければならない」と考えてしまいがちです。しかし、この欄は様式第6号を利用するすべての人について、基礎年金番号を書かせるために設けられているわけではありません。
実際に厚生労働省が公開している「指定医療機関等を変更するとき」の記載例では、一般的な転院の例について「①労働保険番号」は記入されていますが、「②年金証書の番号」は空欄になっています。[参照:厚生労働省「指定医療機関等を変更するとき」記載例]
「年金証書の番号」と「基礎年金番号」は別物
ここが特に間違えやすいポイントです。日本年金機構の年金制度で使用される「基礎年金番号」と、労災保険の様式第6号に記載されている「年金証書の番号」を同じものと考えないようにしましょう。
基礎年金番号は、公的年金制度の加入記録などを管理するために使われる番号です。そのため20代で会社員として厚生年金に加入している人などでも基礎年金番号を持っています。
一方、様式第6号の年金証書番号について厚生労働省の労災レセプト関係資料を見ると、労働保険番号は14桁、年金証書番号は9桁とされています。つまり、書類に記載されている「年金証書の番号」を基礎年金番号で代用するという理解は適切ではありません。[参照:厚生労働省 労災レセプト電算処理システムFAQ]
年金証書番号が関係するのは傷病補償年金などを受けるケース
では、なぜ転院届である様式第6号に「年金証書の番号」が存在するのでしょうか。理由を理解するには、様式第6号には単純な転院以外の用途もあることを知っておく必要があります。
労災による療養が長期間続き、一定の条件を満たした場合には「傷病補償年金」などの対象になることがあります。厚生労働省の資料では、傷病補償年金の受給権者が療養補償給付を受ける手続きについて、年金証書の番号などを記載した様式第6号を提出する仕組みが示されています。
つまり、この年金証書番号欄は、労災の傷病補償年金などの受給と関係するケースで使用される欄と理解すると分かりやすくなります。単に国民年金・厚生年金へ加入しているというだけで、そこに基礎年金番号を書くという意味ではありません。[参照:厚生労働省 労災保険法関係通達]
通常の転院なら厚労省の記載例では年金証書番号は空欄
実際の書き方を判断するときに参考になるのが、厚生労働省自身が公開している記載例です。「指定医療機関等を変更するとき」の様式第6号記載例では、「①労働保険番号」には番号が記載されている一方、「②年金証書の番号」の各マスは空欄になっています。
これは、一般的な転院の手続きで年金証書番号を持っていない人が、基礎年金番号を探して無理に記入する必要があるわけではないことを判断するうえで重要な資料です。
例えば、20代の会社員が仕事中に負傷し、最初に受診した労災指定病院から別の労災指定病院へ転院するだけで、傷病補償年金などを受給していないケースであれば、「年金証書番号が見つからない=必要な書類を紛失している」と直ちに考える必要はありません。
年金証書を持っていないなら基礎年金番号を勝手に記入しない
書類の空欄を見ると、「何か番号を書かなければ受理されないのでは」と不安になるかもしれません。しかし、分からないからといって基礎年金番号やマイナンバーを年金証書番号欄へ転記するのは避けたほうが安全です。
特にマイナンバーは用途が法律で定められている重要な個人番号です。書類上で求められていない欄へ自己判断で記載するものではありません。
傷病補償年金などを受給した覚えがなく、単純な転院のために様式第6号を書いているのであれば、まず厚生労働省の公式記載例と照らし合わせます。それでも自分のケースで空欄にしてよいか判断できなければ、提出先となる変更後の労災指定医療機関または所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。
様式第6号はどこへ提出するのか
厚生労働省の案内では、労災指定医療機関等を変更するときは、変更後の労災指定医療機関等へ様式第6号を提出します。変更前の病院に対して別途変更手続きをする必要はないとされています。
例えばA病院からB病院へ転院するのであれば、原則としてB病院側へ様式第6号を提出するという流れです。病院側を経由して所轄の労働基準監督署長へ提出されます。
なお、労災指定ではない医療機関へ変更する場合などは手続きが異なることがあります。自分のケースで様式第6号が正しいか分からない場合も、労働基準監督署または医療機関の労災担当窓口に確認するとよいでしょう。
労災の様式は厚生労働省公式サイトから確認できる
労災保険関係の主要な請求書・届出書は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」で公開されています。様式第5号、第6号、第7号、第8号など、用途によって書類が細かく分かれています。
インターネット上には古い様式や非公式の記入例も残っています。そのため、これから提出する書類については厚生労働省または都道府県労働局が公開している最新版を確認するのが安全です。[参照:厚生労働省 労災保険給付関係主要様式]
特に労災の書類は似た名称の様式が多いため、「第6号」という番号だけで判断せず、書類上部に書かれている正式名称まで確認すると間違いを防ぎやすくなります。
分からない欄がある場合は労働基準監督署に確認するのが確実
様式第6号の記載内容は、転院なのか、傷病補償年金の受給後なのかなど、本人の状況によって異なります。そのため個別事情については、所轄の労働基準監督署へ確認するのが最も確実です。
問い合わせる際には、「業務災害で病院を変更するため様式第6号を書いている」「傷病補償年金は受給していない」「②年金証書の番号は空欄でよいか」のように状況を具体的に伝えると確認しやすくなります。
提出期限などで急いでいる場合には、存在しない番号を探し続けたり、基礎年金番号を自己判断で書き込んだりするより、変更後の医療機関の労災担当窓口や所轄労働基準監督署へ確認するほうが早く解決できることがあります。
まとめ:様式第6号の年金証書番号は基礎年金番号ではない
労災保険の様式第6号にある「年金証書の番号」は、国民年金や厚生年金への加入者が持っている基礎年金番号を書く欄ではありません。様式第6号は通常の転院だけでなく、傷病補償年金などの支給を受けることになった後の療養に関する手続きにも使用されるため、年金証書番号の欄が設けられています。
厚生労働省が公開している通常の指定医療機関変更の記載例では、「②年金証書の番号」は空欄になっています。そのため、傷病補償年金などを受給しておらず年金証書番号を持っていない人が、基礎年金番号やマイナンバーを代わりに記入する必要があるとは考えないほうがよいでしょう。
「基礎年金番号しか見つからない」という場合は、まず自分が労災の傷病補償年金などを受給しているのかを確認してください。受給しておらず通常の転院手続きとして様式第6号を提出するのであれば、厚生労働省の記載例では年金証書番号欄は空欄です。ただし個別の提出内容について最終的な判断に迷う場合は、変更後の労災指定医療機関または所轄の労働基準監督署に確認してから提出するのが確実です。


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