記録的な大雨になると、道路の冠水や土砂崩れ、河川の氾濫によって自動車が立ち往生するケースが発生します。特に警戒レベル5に相当する大雨特別警報が発表される状況では、普段通行している道路であっても安全とは限りません。
2026年8月30日には、気象庁が福井県福井市、大野市、勝山市にレベル5大雨特別警報を発表し、「これまでに経験したことのないような大雨」で、何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高いとして、直ちに身の安全を確保するよう呼びかけました。[参照:気象庁]
こうした状況では、問題を「ドライバーが警察や消防に迷惑をかけるか」という個人への非難として考えるより、不要不急の車移動を減らして、自分が被災者になる可能性と救助・救急活動への追加負担をできるだけ小さくするという防災の観点で考えることが重要です。
警戒レベル5は「これから危険になる」という段階ではない
警戒レベル5相当の情報が出る状況では、すでに災害が発生している可能性が極めて高く、命の危険が迫っています。そのため、レベル5になってから遠くの避難場所まで車で移動すれば安全になる、という単純なものではありません。
気象庁も、指定された避難場所へ移動することがかえって危険な場合には、少しでも浸水しにくい高い場所へ移るなど、その時点の状況に応じて身の安全を確保する必要があると説明しています。[参照:気象庁]
重要なのは、特別警報が発表されるまで待つことではありません。避難が必要な地域では、自治体の避難情報や気象情報を確認し、より早い段階で安全な場所へ移動することが基本になります。
大雨の車移動で特に危険なのが道路冠水
大雨時の運転で注意したいのが冠水道路です。道路上に水がたまっていても、水深は車内から正確に判断できません。さらに夜間や激しい雨の最中には路面そのものが見えにくくなります。
国土交通省は、自動車は深い水の中を走行できるように設計されているわけではなく、冠水した道路へ安易に進入しないことが重要だと注意喚起しています。水深が車両の床面を超えると、エンジンやモーター、電気装置などに不具合が発生し、最悪の場合は車が停止して移動できなくなる可能性があります。[参照:国土交通省]
例えば普段なら問題なく通過できる道路でも、数十分前からの豪雨によって状況が一変することがあります。「前の車が通ったから自分も大丈夫」「この道は毎日走っているから大丈夫」といった判断は危険です。
アンダーパスは特に冠水リスクが高い
鉄道や道路の下をくぐるアンダーパスは、周囲より道路が低くなっているため、大雨時に水が集中しやすい場所です。
国土交通省によると、全国には約3,700か所のアンダーパスがあり、排水ポンプの能力を超える雨が降った場合には水がたまる可能性があります。そのため冠水のおそれがある場所では、事前通行規制や道路利用者への情報提供が行われています。[参照:国土交通省]
道路が冠水すると水面の下にある縁石、側溝、段差なども確認できません。見た目では浅そうでも、安全に通過できる保証はないため、冠水箇所へ車で進入しないことが原則です。
水没すると車から出られなくなることもある
冠水道路へ進入して車が止まった場合、「車内にいれば安全」とは限りません。周囲の水位が上昇すると、水圧によってドアを開けにくくなるためです。
国土交通省によると、水深がドアの下端にかかると車外からの水圧によってドアを内側から開けることが困難になり、ドアの高さの半分を超えると内側からほぼ開けられなくなるとされています。[参照:国土交通省]
さらに水位が急上昇する状況では、エンジンや電装系の停止によって窓が操作できなくなる可能性も考えなければなりません。冠水路に入らないことが最も重要ですが、万一車が水没する状況になった場合に備え、脱出方法や脱出用ハンマーの位置を普段から確認しておくことも防災対策になります。
立ち往生した車は救助活動を増やす可能性がある
大雨の中で車が動けなくなり、運転者や同乗者が自力で安全な場所へ移動できなければ、警察や消防などによる救助が必要になる場合があります。負傷者がいれば救急搬送が必要になる可能性もあります。
また災害時の道路は、一般車両だけが使用するものではありません。救急車、消防車、警察車両、道路管理車両なども移動する必要があります。国土交通省も、大規模災害時に避難・救助や物資供給などの応急活動を行うため、緊急車両の通行を確保する重要性を示しています。[参照:国土交通省]
そのため、不要不急の移動によって新たな事故や立ち往生が発生すれば、結果として救助要請が増えたり、道路上の障害となったりする可能性があります。
ただし「大雨の日に運転した人=迷惑」と一括りにはできない
一方で、大雨の中を走っている車を見ただけで、そのドライバーを無条件に非難するのも適切ではありません。災害時にも医療、消防、警察、道路管理、介護、物流、ライフラインなどの業務を続ける必要があり、仕事上どうしても移動しなければならない人がいます。
また、避難のために自動車を利用するケースもあります。高齢者や身体の不自由な人など、徒歩での避難が難しい人がいる家庭では、状況によって自動車による早期避難が必要になることがあります。
したがって重要なのは「運転したかどうか」だけではなく、どの時点で、どのような目的で、どの程度の危険がある道路を走ったのかです。災害時の運転を一律に善悪で評価するのではなく、不要不急の移動を避けることが基本と考えるほうが現実的です。
レベル5になってから車で避難することにも危険がある
警戒レベル5になった後、「危ないから今から車で避難しよう」と考える場合にも注意が必要です。すでに道路冠水や土砂崩れ、河川の氾濫が発生している可能性があるからです。
例えば自宅から避難所まで2kmしかなくても、その途中に河川、橋、アンダーパス、崖沿いの道路などがあれば、移動そのものが危険になることがあります。
気象庁はレベル5大雨特別警報について、命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保しなければならない状況と説明しています。安全な避難はレベル5を待つのではなく、自治体の避難情報などを参考に早めに判断することが重要です。
2026年8月30日の福井県では最大級の警戒が必要な状況
2026年8月30日、気象庁は福井県福井市、大野市、勝山市にレベル5大雨特別警報を発表しました。気象庁は「これまでに経験したことのないような大雨」とし、浸水想定区域などでは何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高いと発表しています。
さらに、普段災害が起きないと思われている場所でも最大級の警戒が必要であり、今後ほかの市町村にもレベル5特別警報を発表する可能性があるとしています。[参照:気象庁・2026年8月30日発表]
岐阜県や石川県を含め周辺地域についても、状況は短時間で変化する可能性があります。現在の警報・注意報については、地域名だけを見て判断せず、気象庁の最新情報で市町村単位の状況を確認する必要があります。[参照:気象庁 警報・注意報]
大雨時に運転を始める前に確認したいこと
大雨の日は、出発してから危険に気付くのではなく、出発前に「そもそも今日移動する必要があるのか」を判断することが大切です。
- 気象庁の警報・特別警報を確認する
- 自治体の避難情報を確認する
- 気象庁のキキクルで浸水・洪水・土砂災害の危険度を確認する
- 道路管理者や高速道路会社の通行止め情報を確認する
- 冠水した道路には進入しない
- 河川沿いや崖沿い、アンダーパスなど危険な経路を避ける
- 不要不急なら予定そのものを延期する
気象庁の「キキクル」では、土砂災害、浸水害、洪水災害の危険度を地図上で確認できます。[参照:気象庁 キキクル]
「目的地まで行けるか」だけでなく、「帰宅する時間帯にさらに雨が強くならないか」まで考えることも重要です。
まとめ:レベル5では不要不急の車移動を避け、自分が新たな要救助者にならないことが重要
警戒レベル5に相当する大雨特別警報は、単に「雨がかなり強い」という意味ではありません。何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高く、命の危険が迫っている状況です。
このような状況で不要不急の車移動を行えば、道路冠水や土砂災害によって立ち往生し、運転者自身が救助を必要とする可能性があります。さらに道路上の停止車両が増えれば、状況によっては警察、消防、救急、道路管理、レッカーなどの活動にも影響します。
ただし、大雨の中で運転している人を一律に「迷惑なドライバー」と決めつけることも適切ではありません。救命・医療・物流など災害時にも必要な移動があり、早い段階での避難に車が必要なケースもあります。
防災上重要なのは誰かを責めることではなく、不要不急の移動を控え、危険が深刻化する前に安全を確保し、自分自身が新たな要救助者にならないことです。特にレベル5まで状況が悪化した地域では、無理に車で遠くへ移動するのではなく、自治体や気象庁から出ている最新情報を確認し、その時点で最も安全を確保できる行動を選ぶ必要があります。


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