日本では毎年9月1日が「防災の日」です。東日本大震災が発生した3月11日の印象が非常に強いため、「なぜ防災の日は3月11日ではないのだろう」と疑問に思う人もいるでしょう。
理由はとても明確です。防災の日は東日本大震災より約半世紀前の1960年にすでに制定されており、9月1日は1923年の関東大震災が発生した日だからです。そのため、2011年3月11日の東日本大震災を受けて新しく日付を決めた制度ではありません。
さらに9月1日は、関東大震災の記憶だけではなく、台風などの風水害が増える時期に防災意識を高めるという意味も持っています。現在の「防災の日」は地震だけを対象とせず、台風、豪雨、洪水、高潮、津波、火山災害など幅広い自然災害への備えを考える日として位置付けられています。
- 防災の日が9月1日なのは関東大震災が起きた日だから
- 「防災の日」が正式に作られたのは1960年
- 3月11日が防災の日ではない最大の理由は「後から起きた災害」だから
- 9月1日は地震だけでなく台風への備えにも適した時期だった
- 現在の防災の日は地震だけを対象にしていない
- 9月1日前後には「防災週間」も設定されている
- では3月11日は国として特別な日になっていないのか
- 阪神・淡路大震災にも別の防災関連記念日がある
- 関東大震災が日本の防災史で特別な意味を持つ理由
- 1923年の関東大震災から1960年の制定まで37年空いているのはなぜ?
- 防災の日は「祝日」ではない
- 9月1日と3月11日は両方を防災の機会にすればよい
- まとめ:9月1日は関東大震災を起点に1960年から続く防災の日
防災の日が9月1日なのは関東大震災が起きた日だから
1923年(大正12年)9月1日11時58分ごろ、関東地方を中心に甚大な被害をもたらした関東大震災が発生しました。東京や神奈川を中心に建物倒壊や火災、津波、土砂災害などが発生し、近代日本の災害史を大きく変えた出来事となりました。
内閣府も、9月1日について「関東大震災の発生日」であり、その日が閣議了解によって防災の日に定められていると説明しています。2023年の防災白書では、関東大震災を「我が国の災害史において特筆すべき災害」と位置付けています。[参照]
つまり9月1日は、単に秋の防災訓練を行いやすい日として選ばれたわけではありません。日本の近代防災政策を考えるうえで大きな転換点となった関東大震災の記憶が根本にあります。
「防災の日」が正式に作られたのは1960年
防災の日が制度として創設されたのは、関東大震災から37年後の1960年(昭和35年)です。
1960年6月17日の閣議了解では、政府や地方公共団体などの防災関係機関だけでなく、広く国民が「台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」ことを目的として、防災の日を創設するとされました。そして毎年9月1日を防災の日とすると明記されています。[参照]
ここで重要なのは、2011年の東日本大震災が起こる51年前から9月1日は防災の日だったという時系列です。この事実を押さえると、「なぜ3月11日を選ばなかったのか」という疑問も理解しやすくなります。
3月11日が防災の日ではない最大の理由は「後から起きた災害」だから
東日本大震災が発生したのは2011年3月11日です。一方、防災の日の制定は1960年です。その差は約51年あります。
つまり、防災の日の制定時点では当然ながら東日本大震災はまだ発生していません。「9月1日と3月11日を比較して、政府が9月1日を選んだ」という歴史ではないのです。
時系列にすると分かりやすくなります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1923年9月1日 | 関東大震災発生 |
| 1960年6月17日 | 閣議了解により9月1日を「防災の日」に制定 |
| 1982年 | 防災の日・防災週間について改めて閣議了解 |
| 2011年3月11日 | 東日本大震災発生 |
したがって「3月11日ではなく9月1日にした」というより、「もともと9月1日が防災の日として50年以上定着していたところへ、2011年に東日本大震災が発生した」と理解するのが正確です。
9月1日は地震だけでなく台風への備えにも適した時期だった
防災の日が9月1日になった背景には、関東大震災だけでなく、日本の気象的な事情もあります。1960年の閣議了解では、対象となる災害として地震だけでなく、台風、高潮、津波なども挙げられています。[参照]
日本では夏から秋にかけて台風が接近・上陸しやすく、9月は台風や秋雨前線による豪雨・洪水・高潮などへの警戒が必要な時期です。その意味でも、9月初めに防災を見直すことには実用的な意味があります。
防災の日はしばしば「関東大震災の日」とだけ説明されますが、制度上は最初から複数種類の災害への備えを促す日として設けられています。
現在の防災の日は地震だけを対象にしていない
現在の防災の日の目的はさらに幅広くなっています。1982年5月11日の閣議了解では、政府や自治体、国民が台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などについて認識を深め、備えを充実・強化し、災害の未然防止と被害軽減につなげることが目的とされています。[参照]
そのため、現在の防災訓練では地震だけでなく、洪水、土砂災害、津波、避難所運営、救助、情報伝達などさまざまな内容が扱われます。
2026年度の内閣府資料でも、日本では台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、高波、竜巻、暴風、崖崩れ、土石流、地すべり、地震、津波、火山噴火など多様な災害が発生しやすいとして、9月1日の防災の日と防災週間を設ける趣旨が説明されています。[参照]
9月1日前後には「防災週間」も設定されている
現在では9月1日だけでなく、その前後を「防災週間」として全国的な啓発や訓練が行われています。
1982年の閣議了解によって、防災の日を含む1週間を防災週間とすることが決まり、その後1983年に中央防災会議が毎年8月30日から9月5日までを防災週間とすることを決定しました。[参照]
この時期には政府や自治体による総合防災訓練、防災講演、展示、防災功労者の表彰などが各地で行われます。学校や企業、地域自治会などで9月初めに避難訓練を行うことが多いのも、この制度と関係しています。
では3月11日は国として特別な日になっていないのか
防災の日が9月1日のままだからといって、3月11日の東日本大震災が軽視されているわけではありません。東日本大震災は日本の防災政策、津波対策、避難計画、原子力防災などに極めて大きな影響を与えました。
毎年3月11日には政府、自治体、被災地域、学校、企業などで追悼や防災に関する行事が行われています。また震災の経験や教訓を後世へ伝えるため、東日本大震災に関する記録・伝承施設や震災遺構なども各地に整備されています。
つまり9月1日と3月11日は競合するものではありません。9月1日は国全体の幅広い防災を考える歴史的な「防災の日」、3月11日は東日本大震災を記憶し教訓を継承する重要な日という異なる意味を持っています。
阪神・淡路大震災にも別の防災関連記念日がある
大きな災害が起きるたびに9月1日の防災の日を移動するのではなく、日本では災害ごとの教訓に応じて別の日や週間を設けてきた例があります。
代表的なのが1月17日です。1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生し、災害時にボランティアが重要な役割を果たしたことを受けて、同年12月の閣議了解によって毎年1月17日が「防災とボランティアの日」とされました。さらに1月15日から21日までが「防災とボランティア週間」となっています。[参照]
このように、一つの大災害が発生するたびに既存の防災の日を変更するのではなく、それぞれの経験やテーマに応じて防災活動を積み重ねる形が取られています。
関東大震災が日本の防災史で特別な意味を持つ理由
関東大震災は単に被害が大きかっただけではありません。近代化が進んだ首都圏を襲い、都市の建築、防火、道路、復興計画、行政の災害対応など幅広い分野へ影響を及ぼしました。
内閣府は、関東大震災を近代日本における災害対策の出発点として位置付けています。100年後の2023年にも、関東大震災を改めて学ぶ特設ページが設けられました。[参照]
そのため9月1日は、単なる「昔の大地震の命日」というより、日本社会が大規模災害への備えを考える象徴的な日になっています。
1923年の関東大震災から1960年の制定まで37年空いているのはなぜ?
関東大震災が1923年に起きたにもかかわらず、防災の日の制定は1960年です。そのため「震災直後から防災の日だった」と思っている場合は注意が必要です。
防災の日は関東大震災そのものによって自動的に生まれた記念日ではなく、戦後になって国民の防災意識向上や全国的な防災訓練を促進する制度として政府が正式に設けたものです。
1960年6月17日の閣議了解では、関係機関だけでなく国民全体の防災意識を高めることを目的に、防災思想の普及、防災功労者の表彰、防災訓練などを行うことが示されています。[参照]
防災の日は「祝日」ではない
9月1日は国民の祝日ではありません。学校や会社が原則として休みになる日ではなく、政府が防災への認識を深める目的で設けた啓発の日です。
そのため、カレンダー上では通常の平日でも、自治体、学校、企業などでは避難訓練や安否確認訓練が実施されることがあります。政府も防災の日を中心として毎年総合防災訓練を行っています。
例えば2025年9月1日には、全閣僚参加の政府総合防災訓練が実施され、首都直下地震や南海トラフ地震を想定した訓練が行われました。[参照]
9月1日と3月11日は両方を防災の機会にすればよい
家庭の防災という観点では、「正式な防災の日がいつか」にこだわりすぎる必要はありません。9月1日と3月11日の両方を、備えを見直すタイミングとして利用することもできます。
例えば9月1日には台風・豪雨・地震を含めて非常食や飲料水、モバイルバッテリー、懐中電灯、簡易トイレなどを確認し、3月11日には津波避難場所、家族との連絡方法、家具固定などを再確認する方法があります。
半年ほど間隔が空くため、食品・飲料水の消費期限や乾電池、防災用品の状態を定期的に確認する仕組みにもしやすくなります。
まとめ:9月1日は関東大震災を起点に1960年から続く防災の日
日本の「防災の日」が3月11日ではなく9月1日なのは、1923年9月1日に関東大震災が発生し、その日を踏まえて1960年に政府が毎年9月1日を防災の日と定めたためです。[参照]
東日本大震災が発生したのは2011年3月11日なので、防災の日が制定されてから約51年後です。そのため「3月11日と9月1日を比較して9月1日が選ばれた」というわけではありません。
また9月1日の防災の日は、関東大震災の追悼だけを目的としたものでもありません。地震、津波、台風、豪雨、洪水、高潮、土砂災害など、日本で起こり得る幅広い災害への認識を深め、被害を少なくするための備えを確認する日です。現在は8月30日から9月5日までが防災週間とされています。[参照]
3月11日には東日本大震災の記憶と津波防災を考え、9月1日には関東大震災の教訓を起点として幅広い自然災害への備えを見直す。このように複数の災害の経験を防災へ生かしていくことが、それぞれの日付が持つ本来の意味といえるでしょう。

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